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十彩  作者: サカキコウ
3/3

部活

三話目です

よろしくお願いします!

目的地まで案内、いや連行と言ったほうが正しいだろうか。前を歩く明石先輩は、定期的に笑顔で振り返り俺がついて来ていることを確認している。

どうやら俺は信用されていないようだ。

まぁ、それも仕方のない事だろう。今日あったばかりで渋々ついて来ている奴を信用する方が無理がある。

後ろを歩かれていないだけマシだ。後ろだとそれこそ連行されている感じになってしまう。

しばらく歩く事数分、5階のある教室にたどり着いた。

5階は普段は授業で稀に使われるくらいで、あまり来ることがない。用事がないのにわざわざ最上階である5階まで来る気には俺を含めほとんどの生徒が思わない。


「さぁ、着いたよ。どうぞ入ってくれ。」


そう言いながら、明石先輩はドアを開ける。


「ここは?」


「普段は使われていない空き教室さ。」


中に入ると特に驚くようなものは無く、普通の教室だった。

ただ机と椅子があるだけ。一つ珍しいものがあるとすれば、エコキャップが入った箱とコンタクトの空ケースが入った箱が置いてあることくらいだろうか。

そう言えば昼休みボランティア部がどうとか言っていた気がする。

一応活動はしっかりと行われているようだ。 


「あの〜、あやか帰りたいんで用件を済ませてもらえませんか。」


「そう焦るな。ほら、お茶でも飲むといい。」


明石先輩は、紅茶を入れて差し出してくれた。

椅子に座るように促されたので、どうも、と軽くお辞儀をして腰をかける。


「昼休みも言った通りさ。是非この部活に入ってくれないか?」


「俺ボランティアとかどうでもいいんですけど。

ゴミを拾ったのもたまたまですし。」


「知っているかい。世の中には落ちているゴミを拾うという選択肢が頭にない人も存在するんだ。」


明石先輩は、紅茶をすすり一呼吸置くと話を続ける。


「でも君は違った。君は、見て見ぬ振りをするという選択肢だけで無く、自ら拾うという選択肢を持っていた。自ら拾うを選択したのはたまたまかもしれないが、私は等しく立派だと思うよ。」


俺この人のこともっとアホだと思ってた。失礼だけど。

しっかりと自分の考えっていうか意志を持っているんだな。


「どうだい、入ってくれるかな?」


「明石先輩は皆平等が目標みたいな事を言っていましたが、やっぱりそれは難しいと思います。」


俺は知っている、人間は自分より劣った誰かを見下さなければ生きていけない。

そんな生き物が平等なんて…。

しかし先輩は、ふふっと笑い話しだす。


「確かにそうかもしれないね。でも、それの何がいけないんだい?確かに簡単な事ならすぐに結果が出るだろう。私はそれに価値なんて感じない。挑戦する事に意味があるのさ。」


眩しいくらいの笑顔で明石先輩はそう告げる。それはもう窓から入ってくる太陽の光と引けを取らないくらいに。

話になってみるのも悪くないのかもしれない。

それに、平等は俺の求めていたものでもある。弱い自分を変えるいい機会かもな。


「分かりました、入部します。」


「そう言ってくれると思っていたよ。」


ガチャッ


話が終わったタイミングで誰かが入ってくる。


「こんにちは〜。も〜光先輩、部室であんな恥ずかしい話しないでくださいよ。入り辛かったじゃないですか〜。」


そこには、一人の女子が立っていた。銀色の髪をショートバブにしているおっとりとした美少女だ。

おそらく話をろうかできいていたのだろう。恥ずかしい話とはさっき明石先輩が熱弁していた内容だろう。

俺はいい事を言っていると思ったが、この子には全く響かなかったようだ。


「すまないね。ほらお茶でも飲むといい。」


少女は、喜びながら席につきお茶菓子を出して紅茶をすすっている。

少し飲むと少女の視線が俺に向いた。


「それでこの人誰です?」


「紹介が遅れたね。彼は入部希望者の山川大地くん、2年生だよ。」


「へー、どうもです。一年の一条わたりです。」


「あぁ、山川大地だよろしく。」


自己紹介も終わり俺は何をすればいいのか分からないから、ぼっーとしていた。

ふと疑問に思った事を口にする。


「そういえば、普段どんなことするんですか?」


「私もよく知らないですね〜。光先輩何するんです?」


「え、一条も知らないの?」


「です。私も最近入部したばかりなので。」


てっきり知っているのかと思ってた。


「地域のボランティア活動に参加したり、募金活動とかかな。平日は特にやることないから、たまにゴミ拾いと掃除だね。」


妥当な内容だろう。正直ボランティアって言ったってそんなにやることなさそうだし。それに楽なら楽で別に問題ない。

今日は特にやることも無いらしく、お茶をご馳走になって解散になった。



家に帰るとどっと疲れがのしかかってきた。

いつもと違うことがあり過ぎて疲れてしまったのだろう。

明石先輩に絡まれ、部活に入りなんかすごい一日だった。

そういえば、昨日教室で話しかけてきた女子はなんだったのだろうか。

話したことない人によくわからない質問をするなんて、ギャルの考えていることはよく分からん。

俺みたいな普通のやつは全く理解できない領域の話だと思う。まぁ、もう話すことはないだろうから関係ないけど…。

これから忙しくなりそうだ、そう思いながら眠りについた。



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