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十彩  作者: サカキコウ
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出会い

五月、新学期が始まり1ヶ月が経つ。

新しいクラスで簡単にグループができ始める頃だろう。2年の俺たちは、去年からのクラスメイトと一緒にいる奴もいれば、新しい出会いを求めて話したことのない人間に話しかける奴など様々だ。

新しい出会いを求めるのには俺は反対派だ。

行動を起こすのは、同時にリスクも伴うのだ。失敗すれば、この先の1年間過ごし辛くなってしまう。

クラスでの立場は大切で、ある程度の地位を手に入れておいて損などない。

そのためなら、俺は今の友人で満足をしよう。元より、現状に不満があるわけではないのだ。

だからリスクを負わず、ゆっくりクラスに馴染んで行こうと思う。

ノーリスクハイリターンそんな社会だったら良いのにな。


「ちょっと良いかな?」


背後から聞こえる声と共に、背中をチョンチョンと突かれる。

突かれたことで自分が呼ばれていると確信して、後ろを振り向く。

するとそこには、今年から同じクラスになったまだ話したことのない女子が立っていた。来た!初対面の人と話すイベント。

ここは失敗したくない。さっきも惨めに語ったように今後の俺の立場に関わる。

ここは慎重に会話をしよう。


「えーと、なにきゃな?」


か、噛んだー!やってしまった、俺はもう笑い者だ。

だってこの女の子すっごい陽キャっぽいんだもん。顔も可愛いし。髪の毛茶色に染めててギャルだよ絶対。


「実はね聞きたいことがあって。」


あれ意外と普通?俺だけ顔赤くして恥ずかしがっててなんか、みっともなくない?俺


「差別ってどう思う?」


なに言ってんだこの人?

あまりに想像を超える質問に、さっきまで熱くなっていた体温が一気に平温まで落ちたのが分かる。


「何その顔〜。」


ギャルが差別で悩むなんて、こんなこと思うのは失礼かもしれないが意外だ。

だがそんなこと口に出せない。

何故って?だって初対面の人だしどれくらいの距離感で話せば良いか分からないし。


「ごめん何でもない。差別だっけ?ごめん多分力にはなれないかな。」


「そっか。ありがとね〜。」


そう言うと女子は、どこかへ行ってしまった。

何だったんだ?

考えるだけ無駄か、多分俺とは思考が違うだろうし。


休み時間の終わりが近づいている事に気づき、俺は少しモヤモヤした気持ちで準備を始めた。




放課後、今日は特に用事もなくどうしようかと言うところだ。

あまり外出を好む方ではないが、暇すぎるのも考えものだ。

帰る前は、当然自転車通学の俺は駐輪場へ向かうのだが、一人で駐輪場へ行くのはすごく寂しい。

分かるかなぁ、この気持ち。

だからいつも、一人の時は校内をぶらついて誰かを捕まえて駐輪場に連行するのだが、誰も捕まえられなかった。

正直なところ、大体の確率で誰も捕まらない。

まぁ、友達があまり多くないからしょうがないね!

とりあえず、駐輪場の出入口が下校後すぐは混んでいるから、時間をずらして帰ろう。

人がいっぱいいると少し通行がし辛い。物理的にも精神的にも。

SHR後15分くらいがベストです。これ大事。


無事駐輪場から脱出を果たし、俺は大人しく帰宅した。



数日経って俺は校庭にある広場のような場所に来ていた。高校にしては意外と広く綺麗な広場だ。

緑も多く木陰が心地いい。これも用務員の先生が頑張ってくれているおかげだろう。

ありがとう先生!ありがとう自然!ありがとう地球!

決して勘違いして欲しくはないから言うが、妙な宗教などではないぞ?

実際の宗教勧誘マジ怖いから。

まぁ、自然を大切にしている一人の生徒と思ってくれればいい。

だから、ゴミが捨てられていれば拾う。

ほら今だって生徒がゴミを捨てたのを確認すると、すぐに拾った。

直接注意できないのは許してほしい…。


「素晴らしい‼︎」


とてつもなく大きな声に、びっくりして肩が震える。

なんだよ、不審者か?

恐る恐る声がした方を目が合わないように、覗き込む。

するとそこには、煉瓦の花壇の上に人が立っていた。

体の向きはこっちを向いているようだ。

まさか俺のこと見てないよね?

チラッと、ほんの一瞬だけ目を見ると、ガッツリ目があってしまった。

俺のこと見てるー!?

怖いよー、どうしよう…。

トタッ、着地をした音が聞こえる。


「君のそのボランチィア精神素晴らしい!」


肩がを強く握られる。

何にそんなに興奮しているのだろうか。変な人に絡まれたなぁ。


「…どちら様です?」


「おっと、失礼したね!私は明石光、3年だ。」


「2年の山川大地です。」


「私は、人種皆平等を掲げ、日々ボランティア活動をしているわ。あなたのそのボランティア精神に強く心を打たれたの。是非ボランティア部に入ってもらいたい!」


うん、話が飛躍し過ぎてついていけん。


「えっと、どうゆう……。」


「そのままの意味だよ!私と一緒にボランティアをしよう。放課後迎えに行くから待っていてくれよ!」


何だったんだ?言いたいことを言うだけ言って去っていってしまった。嵐のような人だ。

明石光さんか…。

名は体を表すとはよく言ったものだ。

光という名に恥じない明るさだった。あの笑顔は無垢すぎて逆に恐怖を覚えるほどだ。キラキラとした笑顔に透き通る綺麗な金髪を長く伸ばしていて、絵になる人だった。

しかしだ、しかしあの人と関わるのはごめんだ。

放課後すぐに帰ろう。

駐輪場が混んでいたって構わない。

スピードスターの大地になってやるぜ!



放課後になり、急いで荷物をまとめる。

すぐに教室を出なければいけない。普段運動をしない俺にしては珍しく俊敏な動きをしている。

明石先輩が現れる前に出発しなくては。

いや待てよ?俺クラス教えたっけ?

教えないな。なーんだ、大丈夫じゃん。とりあえず、2年生の階から居なくなれば見つかることはないだろう。

良かった〜



ピンポンパンポーン


「2年の山川大地くん、すぐに放送室前に来るように!以上!」


ピンポンパンポーン



うん。俺に逃げ道はないようだ。

クラスメイトの視線が痛い。


「おい大地、お前何したんだよ。」


ヘラヘラとクラスメイトの真鍋空が話しかけてくる。

1年の頃からの同性の友達の一人だ。


「ゴミを拾ったんだよ…。」


「お前いい事したのに何でそんな暗い顔してるの?」


「気にしないで……。」


「まぁなんだ?頑張れ?」


何で俺は憐むような顔で見ないといけないんだろうか。

はぁ、行くか…。


放送室前に着くと、明石先輩が仁王立ちで腕組みをしている。


「来たようだね。」


「…まぁ。」


「すまないね、クラスを聞くのを忘れていたから放送させてもらったよ。とりあえず、詳しい話は後にしようか。行くよ。」


そう言うと、明石先輩がどこかへ歩き出す。

とりあえず付いていくしかないか。

はぁ………。



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