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  作者: Satch
5/12

第5話:準備

「ねぇ、ゆーちゃん今度デートしようよ?」


いつもの公園でいつものように話をしていると、葵が思いがけないことを言い出した。


「デ、デート?」


「だ、だめ…?」


どこか不安そうな瞳で俺の顔をチラチラ見ている。


「だめじゃないけど…どこに?」


「う〜ん…動物園とか水族館がいいな?」


「ん? 遊園地じゃなくていいのか?」


このくらいの歳の子は、遊園地が大好きなはずなんだけど、どうしてだろう?


「遊園地は……乗れないのとかあるでしょ?」


あぁ、年齢制限とか身長制限とかあるからか、

でも…どこか不自然な感じがしたが、何が不自然か分からなかった。


「…あぁ、そうだな。っていうか、俺でいいのか?」


「…うん」


葵さんすごく赤い顔になってますよ?


「じゃあ……動物園でいいか?」


「うん!」


葵は嬉しそうな満面の笑みを浮かべた。


「でも、いつ行くんだ?」


葵とは週1回この公園でしか会っていない。


「それは今度会う時までに、許可もらっとくね」


許可ってなんだろう?

高校生の俺と動物園に行くから許可をもらうんだろうか…

っていうか普通それ言ったら反対されるから!


「な、なんて言って許可もらうんだ?」


「ん? 友達と遊びに行くからって」


うん、間違っちゃいないね。ってそれで本当にいいのか?

後で知られて怒られたりしないだろうな?


週1回しか会えなかったり、遊びに行くのに許可もらったりって、

もしかして、葵は金持ちの家の子だったりするのかな。


とりあえずバイトでもしてデート資金を稼がなくては。

などと考えていると。


「ゆーちゃん? どうしたの?」


不安そうな顔で葵が俺の顔を覗き込んでいた。


「あ、あぁ、大丈夫、大丈夫」


「ふ〜ん」



次の週、開口一番に葵から報告があった。


「あのね、今度の日曜日ならいいって」


「何が?」


「もう! デートの日だよ!」


と葵が口を尖らせて言う。


「冗談だよ」


そう言ってからかうように笑うと、葵も頬を赤らめながら笑顔になっていた。


「何着ていこうかなー」と葵ははしゃいでいる。


「ね、ゆーちゃんはどんな服が好き?」


「は? どんな服って言われても困るよ」


10歳くらいの娘は、どんな服着るんだ?

俺には未知なる領域だから返答に困っていると、


「ミニスカート好き?」


その微妙な質問はなに!

好きと答えるのもアレだし、嫌いというのも何か違うような…


「じゃあ体操服とブルマは?」


「まてまて、話しが違う方向に走ってないか?」


っていうか、いまどきブルマってあるの?

存在は知ってるけど、見たことはないぞ?


「そういうのが好きな人が居るって本で読んだよ?」


「いやいやいや、俺にそんな趣味ないから!」


どんな本読んでるんだよ!


「じゃあスクール水着?」


「だぁかぁらぁ、そんな趣味ねぇよ!」


動物園にスクール水着で行ったら、それはただの変態だから!


「っていうか動物園にそんな格好で行くのも変だろ? 普通の格好でいいよ」


「普通ってなによぉ?」


「頼むから俺にそんなこと聞かないでくれ…」


「まぁ、いっかぁ」


いのかよ! いいなら聞くなよ!

と突っ込む元気はなかった。完全にからかわれてるな…


「日曜日は、ここで待ち合わせたほうがいいか?


「うーん…駅とかのほうがいいかな」


「じゃあ、10時にT駅な?」


「うん!」


T駅はこの公園から1番近い駅だから、そこを指定した。

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