第1話:出会い
初めて書いた小説ですので、それを考慮してお読みください。
「おにぃちゃん」
不意に声がして、公園のベンチに座り俯いていた俺は、声のしたほうに顔を向ける。
そこには、水色のパジャマ姿にピンク色のカーディガンを
羽織った10歳くらいの少女が、しゃがんでこちらを見ていた。
「どうしたの?」
不思議そうな顔で、沈んだ顔をする俺に向けて問いかけてきた。
「…」
30分程前に彼女に振られた俺は、正直言ってこんな子供の相手を
する気分じゃなかったので、無視することにした。
「ねぇってばぁ!」
「…」
「無視しないでよぉ!」
「…」
しかし、なんでこんなにしつこく声をかけてくるんだ?
「こんなかわいい女の子が声かけてるのに、無視すんのぉ?」
「…自分でかわいいとか……言うなよ」
するとその少女は、ニッと白い歯を見せて微笑んだ。
っ! しまった! こんな少女にまんまと乗せられるとは…
何かその可愛い笑顔に毒気を抜かれた俺は、その少女に話しかけた。
「ところで、お前はこんな時間にそんな格好で何してる?」
もうすぐ夜の10時を回ろうとしている公園に、パジャマ姿の少女…
普通に考えてヤバイだろ……世の中には色々な嗜好の輩がいるし…
「お前じゃない!」
「……はい?」
「私は葵って名前なの、お前じゃないよぉ!」
「…あ、あぁ、悪い悪い」
って、なんで俺が謝ってるの?
「で、おま……葵は何してんだ?」
「名前」
「……は?」
「おにぃちゃんの名前は?」
「…あ、あぁ」
質問に質問で返してきやがったよ…なんか調子狂うな。
「川井祐二って言うんだ」
すると葵は、斜め上に視線を向けて、
少しだけ何かを考えるような仕草をして、いきなり言い出した。
「じゃあ…ゆーちゃんだね」
って、おいおい…
「まてまて、俺は一応年上だぞ? ちゃん付けは止めろよ…」
「そんなの知らないもん! もう決めたんだもん!」
そう言って、ベンチの俺の横にちょこんと腰掛けた。
俺は、なんなんだコイツはと呟いて、ため息を吐いた。
いつの間にか、さっきまで沈んでいた気持ちは
葵との会話でどこかに吹き飛んでいた。
「どうして…俺なんかに声をかけてきたんだ?」
「うーん、なんか寂しそうだったから? …かな?」
葵は悪戯っぽい顔で、上目使いで俺を見つめてきた。
俺はロリコンではないがこの仕草は反則だ、
しかも葵は綺麗な顔立ちをした美少女だから、破壊力抜群だった。
っていうか俺はこんな少女が見ても分かるほど、落ち込んでいたのか…
「単なる暇つぶしじゃないのか?」
「う〜ん、それもあったかもね」と悪戯っぽく笑う。
なんというか、上目使いで見つめてきたり、ませた仕草をするこの少女に、
ほんの少し興味が沸いてきた。だが決してロリではない!
「葵はこんな時間に何してるんだ?」
「じゃ、あたしそろそろ帰るね」そう言って不意に立ち上がった。
それがあまりにも唐突だったので、聞いてはいけないことなのかと思ったが、
わざわざ引き止めることも無いだろう。
ってそれより俺は送って行ったほうがいいんだろうか…?
などと考えていると、
「大丈夫だよ、1人で帰れるから」と言って、ニッコリと笑う。
エスパーかお前は! つーか心を読むな…
「でもほんとに大丈夫なのか?」
「大丈夫、大丈夫、ゆーちゃんが狼さんになっても困るしね」
「ちょ! おまっ! …それ意味分かってて言ってんのか?」
「ん〜? 意味は良く知らないけど、
ママが『男は夜になると狼さんになるのよ』って言ってたから」
齢10歳(推定)の女の子に何を教えちゃってるんだよ!
そう心の中で突っ込みを入れていると、葵はもう公園の出口で手を振っていた。
「ゆーちゃんまたねー、バイバイ」
「……ああ、またな」
俺が応えると、嬉しそうな顔をして踵を返すと、とてとてとかわいらしく歩いていった。
なんだったんだと呟きため息を吐く。
しかしあんな少女が、夜の公園に何の用があったというのだろうか?
しかもパジャマ姿っておかしいだろ?
普通に会話してたから、夢遊病ってわけでも無さそうだしと、俺は首を捻るばかりだった。
でもあの笑顔は可愛かったなと、顔がニヤけてくる。
だからロリではない! よな?
っていうか「またね」っていつよ?