第九十九話 レーちゃんの覚醒
ジュグレさんに案内されながら中規模の個室から小部屋へと作業を進めていく。
レーちゃんが部屋で再生をしてくれている間、絵画や骨とう品は部屋から隣の部屋に移し、価値を損なわないようにその年代を活かしつつ俺が補修する。レーちゃんの力でこれまで新品にまで戻っては困るからだ。
ルーバは相変わらずジュグレさんの監視役だ。
もちろんレーちゃんも神獣だと言う事を知っているから見られても構わないと言えば構わないが、事実を知る人はやはり少ない方が良いだろうと言う警戒心からだ。
作業を初めて5日。骨とう品の移動は思ったより時間と体力を消耗していた。朝から昼過ぎ位までの半日で出来る部屋の数は予定していた半分の5部屋。これでは半月程度では終わらない……。
だからと言って店を閉めるわけにもいかない……。困った。
『ご主人様。どうかしたのなの?』
「うん。このままだと期限に終わらないと思って……」
『レーちゃん、もっと頑張るのなの』
「ありがとう。でもレーちゃんが頑張ってくれても絵や骨とう品が問題なんだ」
『ご主人様がやってるのなの?』
「そうだよ。運び出しと元に戻すのに時間が掛かってるからね」
『わかったなの! レーちゃんそれはやらないなの。置いておいてもだいじょうぶなの!!』
「えっ、絵や骨とう品だけ別に出来るのか?」
『たぶん出来るのなの』
ジュグレさんにお願いして近代の物で完全復元しても差し支えないような物が置いてある部屋に案内してもらって実際に出来るかどうか試してみることにした。
結果、成功である。
『ご主人様~ 出来たなの』
「凄いぞ。レーちゃん。これで作業も早く進められる」
レーちゃんの新たな能力の覚醒に頼るのも申し訳ないが、既にそうは言っても居られない状況だ。あと10日。延ばしても多分2~3日。その間にすべてを終わらせないとその内に従業員の人たちが戻って来てしまう。それだけは避けたい。
「レーちゃん。よろしくお願いします」
『はい。任せるのなの』
それからの作業ははかどった。やはり骨とう品の移動時間が無くなったのは大きい。1日に出来る部屋数が倍以上になった。
全ての客室が終わったのは13日目。残すは厨房と外壁。それと従業員用の寮だけだ。
従業員が戻って来るのは5日後らしい。それまでにすべてを終わらせなくてはならない。
ここからは自分の店を閉めてこの現場。コミュレットに集中する事にしよう。
早々、店に張り紙を出した。「本日から5日間。お休みを頂きます」
コミュレットに時間を集中したことも有り、無事に従業員が戻る前日には全ての作業が終わった。
客室以外は気を遣う絵画や骨とう品が無いし、厨房も広いがその年代を活かす物は何もないからレーちゃんは自由に飛べた。
寮では無断で部屋に入っても良いように貴重品はすべて持って出てもらっていたからすべての部屋のドアを開け放ったことでレーちゃんも自由に飛んでいた。寮全体がキラキラに包まれ、それが収まった時には完了だ。時間に余裕が出来たことでコミュレットが誇る庭園もレーちゃんが飛んで綺麗になった。
今回の件ではレーちゃんが居なければ引き受けられなかった案件だ。大活躍をしたレーちゃんに後でなにかお礼をしよう。
「レーちゃん、本当にありがとう」




