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第九十五話 仕上げの美観

お婆さんからの依頼でタンスを洗濯する事になった。引き渡しは三日後。


俺はまじまじとタンスを見ていてた。どうやって仕上げるかで良い案が思いつかなかったからだ。

普通に作業をすると本当に新品同様でせっかくここまで育った光沢まで消えてしまいそうでそれだけは避けたかったからだ。それはお婆さんが築き重ねた思い出すらも洗い流してしまう気がしたからだ。


とにかく見ているだけでは終わらないと思い、引出しをすべて取り出し一つ一つを丁寧に確認していく。さすが年季が入っているだけ有って底板がすり減り、一部が割れて居たり外れていたりしていた。

この部分は目にする処ではない事と、実用的な部分なのでレーちゃんの羽を使い再生する事にした。

これを他にも活かして目につかない部分はすべてレーちゃんの羽で再生していった。その効果であと50年以上は使える程に強度が戻った。


欠けたり失っている装飾類もレーちゃんの羽と創造魔法で再現し取り付けた、後は表面の仕上げだけだ。


おれはイメージを膨らませながら創造魔法と復元チートを発動させながら濡れ布巾で丁寧に磨いていき、乾いた布で空拭きと仕上げ拭きをして行った。


普段はこんなにもイメージを持続する事はしないから少しだけ精神的な疲れが出たけどタンスの仕上がりはイメージ通り。欠けた部分や凹んだ部分は修復され、お婆さんが長い月日をかけて磨き出した光沢はそのまま残すことが出来た。この仕上がりに喜んでもらえたら良いなとつい思っていしまった。


引き渡しの日、お婆さんがやって来た。タンスを見るなり泣き出してしまいこれには俺も困った。

内心狼狽えてしまったが、お婆さんが落ち着くまで待つしかないと座敷に上げてお茶を出した。


短い時間で気持ちが落ち着いたのか冷めたお茶を一口すすり「ありがとうございました」といった。


どうやら多少は綺麗になるだろうが、まさか失くした装飾品まで付いて来るとは思ってなかったらしく想像以上の仕上がりに今までの思い出が言葉に出来ない分溢れだしてしまったと恥ずかしそうに言っていた。


引出しの隅々までお婆さんに確認をしてもらっている時「これで本当に銅貨5枚なの……」と呟いた声が聞こえてきたが気付かない振りをした。


何度も何度も我が子を労わる様な手でタンスを撫でるお婆さんをみて喜んでもらえたのだど実感してきた。


「仕上がりは如何ですか?」

「ありがとうございます。こんなに素晴らしい姿になって戻って来るとは思ってなかったから……」

「こちらこそありがとうございます。喜んでもらえたのなら俺も嬉しいです」

「それで、お代だけど……本当に銅貨5枚で良いのかい?」

「はい。あそこにも書いてあります『一点に付き銅貨5枚を頂戴します』とね」

「なんだか申し訳ない……他の人と同じように余分に払いたいが私には無理だから……」

「正規の料金だけで十分ですよ。よろしければまたご利用ください」


タンスを荷車に乗せると、何度も何度も「ありがとう」を繰り返しお婆さんは帰って行った。


後日、お婆さんの孫娘さんとその旦那さんが訪ねて来てくれたのは思いもよらぬ出来事だった。


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