第九十四話 嫁入りタンス
今日もいい天気だ。仕事が捗りそうだな。
ここ数日、騎士団と近衛隊の武具を中心に仕事をしていた。武具の仕事は庭で作業をする過程が多く、天気が良いと仕上がる数が上がるんだよね。
うまいっ亭は焼き鳥を教えてから酒の売上が増えたと喜ばれている。俺が教えたのは塩とタレだけだったけど、タージさんが他のアレンジを考えだし、今では唐辛子をたっぷり掛けた炎焼きとかマヨネーズを書けたサラダ風、味噌を付けた田楽味などさすが料理人だ。おがげで今まで以上にルーバが看板犬として頑張っている。時々だけどレーちゃんもうまいっ亭でご飯を貰っているようだ。
正直、あまり迷惑にならなければ良いがと心配しているけど、ミハルさんはお客が喜んでいるから気にしないでと言うし、タージさんはまた店で出せるような料理を思いついたら教えてくれたらそれでいいと笑っている。ほんとうにいい人でいくら感謝しても足りないくらいだ。
「こんにちわ」
「こんにちわ」
あっ、お客さんだ。ルーバ達の事考えていて気付かなかった。
急いで表に出ていくとそこには年配の女性が来ていた。
「いらっしゃいませ」
「ここは何でも綺麗にしてくると言う洗濯屋さんで間違いはないかい」
「はい。まちがいないですよ。どんなものをお持ちになられました?」
「外に置いてあるんだけどね。タンスを一棹お願いしたくてね。頼めるかい」
「はい。お引き受けいたします」
店の外に出てみると荷車にかなり年代の物のタンスが載せてあったので、店の中に運び込んだ。
見た感じでは所々かなり傷んでおり、装飾金具が無いところも有るが、日ごろからしっかり磨かれ、光沢の出た表面が、大事に大事に使われてきたことを物語っていた。
「素敵なタンスですね。使っている人の思い入れが感じられます」
「いやいや、ただ古いだけのタンスだよ」
「では、これだけ綺麗にしている物をどうして俺の所に」
「それは……」
そこからの話は思い出を辿るようにタンスへの思いを交えて話し出した。
「このタンスは私が嫁入りした時に祖母がお祝いだと言って新調してくれた物でね、かれこれ50年は使ってるんです。そのせいかあちこち痛んでボロボロになってしまいました。それで何度も捨てようかと思ったんだけどね、祖母も裕福では無かったくせに私の為に無理して買ってくれた思いを考えるとどうしても捨てられなくてね、今まで使っていたんです。それで、近く孫娘が嫁入りする事になりまして、何かしてやりたいと思っても私もそんな余裕が無くて申し訳いと思っていたんです。そんな時にこちらのお話を耳にしまして、新品同様に綺麗にしてもらえるならこのタンスを孫娘に持たせてやりたいとそう思ったんです。そうすればこのタンスも喜んでくれる気がしまして……。そのような訳でお願いできませんでしょうか」
「わかりました」
話を聞いている内にお婆さんの孫への思いとタンスへの思いが伝わって来て二つ返事で引き受けると言っていた。
「お代は銅貨5枚になりますがよろしいでしょうか」
「えっ? 銅貨5枚ですか?? 銀貨一枚だと聞いていたのですが……」
「あちらをご覧ください」
俺は店内に張ってある料金表を見てもらった。
「みんな料金以上に置いていくだけで基本料金は銅貨5枚ですから安心してください」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
こうして新たな依頼を引き受けることになった。




