第九十三話 ルーバ、地団駄を踏む
チョコラの実家では届いた手紙を読みながら家族みんなで盛り上がっていた。
「なんだこの文章。めちゃくちゃじゃねぇか」
「文章っていうか、これ思った事のメモ書きじゃねぇのか?」
「良いのよ。あの子が書いた事に意味が有るんだから」
「一行じゃないだけましだな……」
「あら、何か言った?」
「いえ、何も……」
そう。チョコラの書いた手紙は身近に起こった出来事の箇条書きで、とても文章としての体は成していなかった。双子の兄たちは笑い転げ、母は内容より届いた手紙に喜び、父は母親の遺伝か……と憐れんで居た。
「レーちゃん。いまお返事を書くからチョコラに届けてくれるかしら」
『ピ~~~~(レーちゃん届けるのなの)』
それから一時間後、レーちゃんは母上から手紙を受け取るとチョコラの待つ王都へと羽ばたいた。
そろそろ日が暮れようとした頃、レーちゃんが戻って来た。
『ご主人様~ ただいまなの~』
「あれ、レーちゃんもう届けてくれたの?早かったね。ありがとう」
『レーちゃんは早いのなの~』
「うん。本当に早いよ」
『あのね。ご主人様にって、母上からこれを預かって来たのなの』
レーちゃんから手紙を受け取り読んでみた。そこにはこう書かれていた。
《 もっと文章力を磨きなさいな 》
一行かあさんだけには言われたくない一言だった。
『おっ、帰った居たのかレー。思った通り早かったな』
『レーちゃん帰って来たのなの』
『一人でのお使いはどうだった』
『うん。楽しかったなの~。それにご飯も美味しかったなの~~』
『なに?ご飯だと!』
『そうなの。母上がとっても美味しいご飯をたべさせてくたのなの』
『美味しいご飯…… それはどんな物だった』
『あのね…… 木に刺さったお肉が焼かれて光ってたなの』
『お肉が光る??』
おいルーバ。涎が垂れてるぞ。なにを想像してるんだか……
「あぁ~ それはたぶん焼き鳥だね」
『よし、チョコラよ。それを作るのだ。我も食べたいぞ』
「……」
『他には何を食べたのだ?』
『……お野菜と果物を一杯食べたなの』
『それでは分からんぞ……』
『……レーちゃんも全部は分からないなの!』
「そうだよねレーちゃん。今日はお疲れさま」
『あぁ~ うまい飯が食えるとわかっていたら我が届けるんだった……』
あのねぇ……
『よし、次は我が手紙を届けるぞ。チョコラよ早々に書くのだ』
「なんでだよ」
ホント、食いしん坊のルーバには困ったもんだ。
そのあと、焼き鳥を作れ食わせろとうるさいルーバに焼き鳥を出してやった。
そう言えばうまいっ亭で焼き鳥は見た事ないな……。こんどタージさんに聞いて知らなければ教えてやろう。きっと人気メニューになるはずだ。




