第八十八話 久しぶりに教会へ
市場で買い物をしながら昔の思い出に浸っていたら、急に教会に行きたくなった。
王都に着いてからしばらくお世話になった場所でもあることから時々顔を出すようにしていたが、実家から戻って来てっからまだ一度も顔を出していない。村のお土産も有るし盗賊を捕まえた謝礼金もかなりあるからそれも渡したい。
そうと決めたら早々に買い物を済ます。もちろん子供たちのおやつは忘れない。
買った物をマジックバックにしまうと教会に歩いて行く。
久しぶりにやって来た教会。いつもように孤児院側から入って行くと元気な子供たちの声が聞こえて来た。
「あっ、チョコラ兄ちゃんだ」
早くも見つかった。
「ねぇねぇ~ お土産ある?」
「あるよ。あとでみんなにあげるから待っていてね」
「わ~~い」
子供たちと戯れていたところに副院長先生がやってきた。
「チョコラ君。久しぶりね。活躍の程は凄い話題になっているから私の耳にも聞こえて来ているわよ」
「それは……」
「でもあまり無茶してはダメよ。怪我でもしたら一大事なんですからね」
「……はい」
会った早々に叱られてしまった。
話題を変えるかのようになってしまったけど、子供たちへのお土産と、帰郷した村でのお土産を渡した。こんなにも持てないわ。と厨房に行き配膳台の上に置いた。
俺が土産物を出している間に神父様を呼びに行ったのだろう。副院長先生とやって来た。
「久しぶりですね、元気そうで何よりです」
「神父様もお元気そうで安心しました」
「おっ、こんなにいつもすまないな」
配膳台の上に乗っている野菜や乾物子供たちのおやつをみて言った。
その後、神父さんが盗賊を捕まえた話をしてきたので、ついでとばかりに神父さんの部屋に移動して、報奨金が入った麻袋をマジックバックから一つ取り出すと神父さんの前に置いた。
「これは盗賊確保の報奨金の一部ですが使ってください」
「……こんなにも良いのか?」
麻袋の中を覗き込んだ神父さんが遠慮がちに聞いてきたから「俺だけでは使い切れないから子供たちのために使ってください」
「……チョコラが良いと言うのならありがたく使わせてもらうぞ」
「はい。そうしてください」
「しかし、一時の恩を忘れる人は多いが。チョコラは泉のように返してくるな」
「……いえ、恩を返すというか、俺が王都に来て神父様に救われたから今が有るんです。今までは職も転々として恩を返すどころか心配ばかりかけて……。でも今は思わぬ大金を手にしたけど自分一人では使い切れないから、神父さんに渡せば俺と似たような境遇の人が居た時に使ってもらえるかなって……。それに子供たちも。ここから自立していくときの手助けになれば……。そう。俺がここで受けた恩を助けを必要とする人に渡るように神父様に勝手にお願してるだけなんです」
「チョコラはやさしいのぅ。まさしく、『情けは人の為ならず。巡り巡って己に帰る』わしもチョコラに情けを掛けた結果がこれだ。そしてまたチョコラも人に情けを掛けておる。だからこのように大金を手にしたのだろう。そしてそれすらも人の為に使おうとしておる。神父のわしより神の教えを守っているのかも知れんな」
「そんな大げさな……ただ出来ることをしているだけで、このお金も俺にとっては過剰な金額だから必要にしている人達に使って欲しいだけです」
それから少し神父様と話をしてから子供たちの所へ戻った。




