第八十五話 久しぶりにうまいっ亭で
やっと終わった……。
終わってみればあの騒動は何だったのかと言いたくなった。
今は昼食を取りにうまいっ亭に来ている。王都に戻ってこんなにゆっくり食事をするのは初めてかも知れない。とにかく仕事に追われミハルさんに差し入れをしてもらっても食べる時間が無いほどだったからだ。
今日はこのまま昼休憩の時間まで待って出来る限り店の掃除するつもりだ。今まで厨房まで手が回らなかったし、夜の仕込みも有る事からやっていなかったけどこちらには新たな道具が有る。それはレーちゃんの羽だけど、今回はそれを使って厨房の掃除をしてみるつもりだ。だけど他では絶対に使うつもりは無いけどね。
食事も終わりすべてのお客が帰ったところでうまいっ亭も昼休憩に入る。タージさん達が昼食を食べている間に厨房を掃除する事を伝え、ゆっくり食べてもらう事にした。
レーちゃんの羽を取り出すと、まずは竈の周りからだ。とんだ調味料などが竈に焼き付いていて年季を感じさせる代物だ。そこにレーちゃんの羽でさっと一振り三振りするだけで焼き焦げは無くなり、土台の欠けも元通り。壁の汚れも無くなった。これぞ不死鳥の再生の力だよ。
その後、シンク、調理台、配膳台に食器棚。最後は天井と床を残すだけとなった。床は羽を振りながら歩けば良いけど問題は天井。椅子の乗ってチマチマやっていたら時間が掛かって仕込みが始まるまでに終わらせるのは無理だろうと悩んで居たらレーちゃんが懐から顔をだした。
『ご主人さま。どうかしたのなの?』
「うん。天井を綺麗にしようかと思ってるんだけど、どうやれば早く終わるか考えていたんだよ」
『わかったなの~ レーちゃんがやるのなの』
そう言うとレーちゃんが厨房を飛び回る。もう凄いとしか言いようがない。厨房の中がキラキラしたかと思えば天井だけでなく後日に廻そうと思っていた排気用の煙突や食器。極めつけは竈の灰までが綺麗になっていた。
レーちゃんの能力は知っていたけど、実は知っているつもりだったと改めて感じさせられたほど見違えた厨房になった。
『ご主人さま~ どうですかなの?』
「……ありがとう。凄いよレーちゃん」
『わ~い。ご主人さまに褒められたなの~~』
そこにタージさんがやって来て絶句した。
しばらくして意識が戻ったタージさんの発した言葉が「どこの店だ」だった。
「チョコラの能力は知っているけど短時間でここまで出来るようになってたのか……」
「これは俺だけでなくレーちゃんのお蔭でも有るんだけどね……」
「レーちゃん……。そう言えば不死鳥だったか……。それにしても凄いな」
二人でレーちゃんの事を関心していたらミハルさんが食器を片付けて持ってきた。
「なに? これどこの店??」
タージさんと同じことを言っていた。




