第八十二話 いつもの日常が戻ってきました
王都に戻ったとたんに王宮に連れていかれると言う予想外な事も有ったが、やっと我が家に帰って来た。馬車の中で聞いた殿下の話もよく理解できなかったが、考え方次第では俺が危険人物とも言える言われ方をしたようにも思えた。確かに、騎士団や近衛隊の武具を手入れしている時に少しだけ補強したりしたけど、特別に強化したりしたわけではない。だけどそれで何かあるのなら補強は止めた方が良いのかも知れない……。まぁ~そんな事は後から考えよう。
二か月近くも店を閉め、タージさん達にも迷惑を掛けてしまった。荷ほどきもそこそこに村の人たちから貰った野菜を大量に持ってルーバを連れてうまいっ亭に顔を出した。
「タージさん。ミハルさん。ただいま戻りました」
「おう。英雄さんのご帰還か」
「それは言わないでください……」
いきなり揶揄われたけどなんか気持ちが落ち着く。俺は持ってきた大量の野菜を渡し留守中のお礼を伝えた。
うまいっ亭から戻ると明日からまたお店を開けるために家に風を通し、埃っぽくなってた部屋を掃除をした。店前に張りだした休業のお知らせも明日から開店しますと書き換えもした。
これで準備は整ったけど、今日の明日ではお客も少ないだろうとこの時は思っていた。
翌朝。開店をする前に大きな張り紙をした。そこに書いたのは
『出張作業は取りやめました。ご持参頂いた物のみお引き受けいたします』
馬車の中で殿下に言われたことで考えたことだ。無闇に出かけて何かあるよりも出向かなければ良いのではかと単純な考えかも知れないけど、何もしないよりましだよな。
ルーバにはうまいっ亭でなく店に居るように頼んでおいた。初めはタージの料理が食えんではないかとごねられたが、渋々だけど居てくれることになった事で安心して店を開けたと同時にやって来たのは常連のお婆ちゃんで「やっと帰って来たのね。待ってわよ」と顔を出してくれた。仕事の依頼は無かったけど、かなりの期間を閉めていたので心配してくれていたのだとか。もう嬉しいし、ありがたい。
作業に入るものが無いのでお婆ちゃんにお茶を出して近況を聞きながら暫しの時を過ごした。
それから近所の人や常連さんら顔なじみの人が続々と顔を見せてくれて、あぁ~帰って来たんだと実感がわいて来た。しかし、だれも仕事の依頼が無かったのは想定外だけどそれはどうでも良く思え、俺の帰りを待ってくれていた人が居てくれたことがとても嬉しかった。




