第八十話 ・・・これはどういうことだ
おかしな盛り上がりで混乱にならない内にディガスの街を出て三日後には無事の王都まで来ることが出来た。行きとは違い何事も起らず戻って来ることが出来た。
街門までやってくると入場検査待ちの列がかなり伸びていた。いつもの事と言えばそれまでだが、やはり王都は人の出入りが凄い。
殿下から勲章を見せれば貴族専用の門から入れるとは聞いてはいるが、俺は庶民だからちゃんと順番待ちの列に並んだ。だけど、みんながチラチラと俺を見ている気がする。気のせいだろうか……。
並んでから一時間程経った時だった。もう少しで俺の番が来るなと思っていたところに門兵がやって来た。
「失礼ですが、王家の親友チョコラ殿では有りませんか」
「……そうですが、俺が何かしましたか?」
「いえ、そのような事は有りませんが、こちらにお越し頂けませんでしょうか」
門兵にそう言われたら庶民の俺は断れない。後をついて行くと貴族専用ではなく、王族専用の門に連れて来られたと思ったら号砲が3発鳴った。
「お急ぎとは思いますが、申し訳ありません。準備が整うまで今しばらくこちらでお待ちください」
「え…っと…… ここは王族専用の部屋ですよね……」
「はい。チョコラ殿は王家の親友殿ですのでここに案内するようにと王太子殿下から言われております」
「……」
「それでは一旦下がらせて頂きます」
「ちょっと待ってください。準備とは何ですか?」
「チョコラ殿を安全にご自宅までお送りする準備でございます」
「安全に??」
「はい。長年の懸念で在った『夜烏の群れ』を捕らえた英雄ですからね。お一人で街を歩かれるのは大変危険と予想されますので、その準備です」
英雄? 危険?? 何を分からないこと言ってるんだ……
それから待つこと一時間。準備が整ったからと案内され、目にした物は王家がパレードで使うようなオープンタイプの馬車。「こちらにお乗りください」とそれに乗せられた。
しかも、そこには王太子殿下が居たのだ。
「なんで殿下がここに?」
「チョコラ殿が馬車で一緒に戻ってくれなかったので、騎竜隊の竜に乗って来たのですよ。お蔭でチョコラ殿より早く王都まで戻って来られました」
あっ……左様ですか……
ところで、何で殿下も一緒に馬車に乗るのだろうか……?
「では、出発しましょうか。街道の安全を守ってくれた英雄殿」
殿下の言い方とかこの状況がすごく引っ掛かるけど、今は何でも良いから早く帰ってゆっくりしたかった。
音楽隊のファンファーレが鳴りだしたところで馬車が動いた。それと同時に大歓声が聞こえたのだ。
「英雄様のお出ましだ」
「さすが王家の親友様」
「街のヒーローだ」
「いや、国のヒーローだろ」
「街道の救世主さ」
様々な声が入り乱た中、ゆっくりと馬車は進ん行った。
「英雄バンザ~イ 王家の親友バンザ~イ」
「英雄バンザ~イ 王家の親友バンザ~イ」
「如何ですか。私が用意しました凱旋パレードは?」
「…………」
やっぱり殿下の仕業か!!




