第八話 クリーニング中を現場検証です
昼食時の話の後、石鹸水に漬けて置いた暖簾を洗濯するからと席を離れたら、タージさんとミハルさんも付いて来た。作業風景をみたいらしいんだ。
初めにミハルさんが「私が先に洗ってみるわ」と言い濯ぎまで終えたけど、あまり変わっていなかったんだ。タージさんもやってみたけど変わらなかった。
最後に俺が洗って濯ぎまでした。先に二人が洗っていたからあまり時間を掛ける事無く汚れも落ち綺麗になった。あとは自然乾燥だと、皺を伸ばしながら暖簾掛に掛けて見たら、なぜか新品同様になっていて、紺地に白抜きの文字がクッキリはっきり浮かび上がっていた。
「やっぱりね」
「まちがいねぇな」
「じゃ~ 昨日話したようにしましょうか」
「あぁ~ ミリアが戻って来てからだけどな……」
「それはしょうがないわね。人が居ないもの……」
何を話しているか分からないけど、俺は綺麗になった暖簾を見ながら満足していた。
本当は休憩時間なんだけど、昨日の続きとばかりに壁の掃除をはじめようとしたら、タージさんに声を掛けられた。「三時半までは休むように。これは業務命令」だと。
三時半まで1時間。何をしようかと考えていると、ミハルさんが「短い休憩時間だけど、しっかり休まないと夜からいい仕事が出来ないわよ」って教えてくれた。
三時半になり夜の開店準備に入った。俺は軽く床の掃き掃除をしてからテーブルと椅子を拭いたら、壁の掃除に取り掛かった。昨日のように床にタオルを敷いて壁をベタベタの雑巾で擦りながら拭いていく。
なぜか二人が見ていて仕込みはしなくて良いのかな?って思いながらも綺麗になって行く壁が嬉しかった。
4時半になり開店だ。昨日と同じように大勢のお客が来てくれて、俺も皿洗いに簡単な盛り付けに追われていた。
時折お客の「ココ本当にあのうまいっ亭か?」とか「これじゃぁ~気を使って気楽に食えねぇ~な」
などと笑い声が聞こえる。
ミハルさんも「そうね。みんなが気を使ってくれたらあそこまで汚れなかったかもね」って笑いを誘っていた。やっぱりこの店はみんなに愛されているんだなって思い、会話には加われないけどお客の声を聴いているだけで俺も楽しかった。
夜の営業も無事に終わり、閉店作業で床の仕上げと残りの壁を掃除した。天井は無理なので我慢してもらうとしても昨日初めて来た時より見違えるほどに綺麗になった店内を見てタージさんもミハルさんも喜んでくれて、俺に仕事をさせてくれた二人の役に立てれた事に気分も向上して「明日はどこを掃除しましょうか?」と聞いてしまい、二人に笑われてしまった。