第七十六話 村中にバレちゃった
国王陛下の決断でキャサル村が王家直轄の天領になったらしいけど、領主様以外は何か変わるんだろうか……? そんなことを考えていると、仰々しく村長が殿下に話しかけた。
「王太子殿下。キャサル村の村長でございます。ご尊顔を拝し恐悦でございます」
「堅苦しい挨拶はしなくていいですよ。先ほど述べた通り、本日からこの村とその周辺は王家の直轄地となりました。村長には引き続きご尽力ください」
「ありがとうございます。それで、これからの事ですが……」
「今までと変わりは有りませんが、王家の親友であるチョコラ殿のご実家がある村という事で、王家もこの村に別荘を建てる事にしました。そのため村の方たちに迷惑を掛けることになるでしょう。ですからこの村には納税が免除されることになりました」
「税の免除ですか…… それは正直助かります」
「では、別荘の場所を決定しだい建築に取り掛かりますが良いですね」
「はい。承知いたしました」
「では、チョコラ殿。ご実家に案内してください」
「……………」
別荘って何?? なんでこんな僻地の田舎に? もう訳が分からないよ……
今さら何を言っても王家が決めたことに平民の俺が口を出せるわけがないけど……ほんと何を考えているのだか……
それから村中が大騒ぎになった。村が天領になり税金が免除されるとか王家の別荘が建てられるとか話題はいくつかあるのに、その中心的な話題はチョコラが王家の親友で王太子が遊びに来たということだ。だいたい、王家の親友などと言う称号すら聞いた事が無い。建国以来初の栄誉がこの村から出たのだ。そりゃ騒がずにはいられないだろう。
「チョコラよ…… 殿下が言ってたアレってなんだよ。わしらにも見せてくれ……」
「そうじゃ。冥途の土産に見せてくれんか」
あぁ~囲まれちゃったよ……
「家に置いてあるから、持ってないんだよ」
「よし、サンドラの家に行くぞ!」
「「「おぉ~~~~!!!!!!」」」
気勢を上げながら父さんを先頭にみんなが俺の実家に移動していった。
みんなが見たがっているアレは居間のテーブルに無造作に置いてある。きっと我が物顔した両親が自慢気に見せびらかすだろう……
「という事で、この村でもよろしくお願いを致しますね」と殿下が笑っていた。
「では、チョコラ殿のご実家に案内をして頂けますか」
とことん余裕を見せる殿下に反論する気力も残っていなかった俺は素直に家に連れて行った。
そこには予想通りというか、期待に反しないというか「チョコラはこの村、いや、この国一の果報者だ」と勲章を高々と上げ威張っている父さんの姿に恥ずかしさを覚え、絶句した所に殿下のダメ押し
「良い親孝行じゃないですか」




