第七十四話 やっぱりそうなるか……
ロンじいの家が見違えた。倒壊寸前の家をいつ建て替えたのかと言われたのは作業が終わった数時間後だ。当然、実家の宴会に来ていた人は知っているので村中の人が実家に押しかけて来た。
「ワシのとこも頼む」「雨漏れが酷いんじゃ」「友達の俺を無視できないよな」など様々な声を掛けてくる。しかし、全員を引き受けると言う訳には行かないのだ。なにせこの村は田舎の村とは言え、80軒ほどの家が有る。実家とロンじいの家だけしかしてないが、最低でも2日~3日は掛かることが分かった。すべてを引き受けていたら半年かけても足りない。
さて、どうするか……
騒ぎを聞きつけたロンじいが村長を連れて来てくれた。
「みんな。なんの騒ぎじゃ!」
「村長か。みんなチョコラに家の修復を頼みに来たんだよ」
「家の修復?」
「ロンじいの家を見て来てみろよ」
「この家を見れば想像が付くわ」
村長がいろいろ言ってくれたけど収まる気配が無かったようで、村長が鶴の一声で場を無理やり押し切った。
「これは村の事業で行う。村長としてわしが優先順位をつけ、チョコラに依頼する。それでいいな」
「…………」
「……村長がそう言うなら」
「よく考えろ。チョコ坊だって全部の家をやっていたらいつまでも帰れんじゃろが、少しはチョコ坊の事も考えてやれ」
村長と話し合った結果、今回は破損や風化が酷い13軒をすることにして、来年から毎年15軒。4年後にはすべての家が終わるという計画を立てて了承した。順番は明日にでも各家を周り確認して明後日には決めると村長は言って帰って行った。これであと一月弱は王都の店に戻れないことが確定したのだった。
村長が決めた順番に沿って作業を進めていた。レーちゃんの羽を使えば一瞬だけど、それだとバレた時が大変そうだから、どうしてもって時、例えば、屋根に乗れないとか、壁の穴が大き過ぎてブラシで磨けないとか……そんな時だけ使うようにしている。だからやはり一軒につき2~3日は掛かった。
そろそろ今回分の13軒が終わろうとしていた時、村長が領主様を連れてやって来た。
「その方がチョコラと申す者か」
「……そうですが」
「うわさは聞いた。この村の家を短期間で新築同様までに修理しているらしいな」
「いえ、掃除をしているだけです」
「それならばそれでも良い。ゼび、我が屋敷もやってはくれまいか」
「順番が有りますので4年後になりますけど、それでも良ければ……」
「4年だと、領主である我が家にたいしてこの村が終わるまで待てと言うのか!」
やはり貴族が出てきると厄介だ。




