第六十七話 ここは逃げるが勝ちだから……
ルーバが結界を張ってくれたことで取り敢えずの安全は確保されたがこの場を回避できたわけではない。夜が明け、運よく誰かが通って助けてくる保証なんてどこにもない。そんな対策にも何もならないことを考えている内に盗賊がテントを囲んだようだ。
「命だけは助けてやる。身ぐるみ脱いで出て来い」
「そうだぞ。死にたくなければ素直に出て来いよ」
「このテントはもう俺らの仲間で囲んでいるからな。逃げられないぞ」
「今から5分待ってやる。それを過ぎたらテントごと潰してやるからな」
盗賊達が好き勝手なことを言っている。
「ルーバ……どうしよう……」
『このまま放って置いても構わぬが、五月蠅くて眠れんわな……』
「それも有るけど、囲まれてるんだよ……」
『そうだな。盗賊如き我が出て行けば一瞬で片づけられるけどな』
「殺すのは善くないよ……」
『では逃げるかのか?』
「それが一番平和なんじゃないかな……」
どうやらルーバは護衛をしたころの血が騒いだようで戦闘がしたくてうずうずしていたようだ。
だけどここは人間界だ。例え犯罪者でもあっても無闇に人を殺めてはいけない。という事で一番いいのは全員を捕らえることが後あとの事を考えると一番いいのだが、非力の俺にはそんなことが出来るはずもない。そうなるとこの場から逃げるのが一番平和的だと俺は考えていた。しかし、ルーバが違う事を考えていた事に俺は気が付かなかった。
『わかった。お主がそこまで言うのなら不本意だがそうしよう』
段取りとして、ルーバに言われたように行動をとる。
まずはすべての荷物を空間魔法で収納してからルーバの背に乗る。身の周りに結界を張り直し一気にテントから駆け抜けて逃げ切るという作戦だ。
俺は朝食の為に出して置いた物や布団などこれから使おうとしていた物をすべて仕舞うとルーバにまたがった。
「ルーバ。準備はできたよ」
『よし、結界を張ったら走り出すからな。テントを抜けるときに衝撃が有るかもしれん。しっかり掴まっていろよ』
ルーバは俺がしっかり掴まった事を確認するといきなりテントを爆発させた。
土魔法で作ったテントだから爆発の衝撃で土埃を起こしながら土塊が四方八方に飛び散り、あちこちから「グエッ」「グボッ」「ブグッ」など声が聞こえて来た。
打ち合わせならここでルーバが走り去る事になっていたが、走り出すことなく土埃が落ち着くのを待っているようだった。
『チョコラよ。これなら文句も有るまい』
周りを見ると盗賊全員が気絶をしていた。




