第六十六話 野盗に出会う
俺を乗せたルーバの走りは早かった。想像していた10倍は早いスピードで走っていた。
落とされないようにしっかりとしがみ付きながら「もっとゆっくり走って」と言っても風に声がかき消され聞こえていないようだった。と思ったのは俺だけで、昼の休憩で聞かされたのは『あれ以上ゆっくり走ったら運動不足の解消にもならぬわ』と言われ、俺に慣れろとまで言われた。どうやらあれが最低のスピードらしい。
王都を出て3時間。すでに馬車でも一日は掛かると言う街を過ぎたところで昼飯を食べるために休憩に入る。今回はルーバに頑張ってもらうため、ルーバの好きな物をたくさん用意してあり、それを出してやる。レーちゃんも人間界の食べ物が気に入ったのか『レーちゃんも食べたいなの』と言って俺たちと一緒に機嫌よく食べている。
王都で暮らすようになってから初めての帰省旅で俺の気も緩んで居たのだか、昼飯が美味しくてつい食べ過ぎた。それとルーバのスピードで体力を消耗していたもの合わさってか、急に眠くなりルーバに持たれて寝てしまった。
気が付いた時にはルーバの背に乗せられ、どの辺りかもわからぬ平野にいた。しかも既に日も暮れていた。
「ここってどの辺り?」
『わからん。昼飯を食った後3つほど村か町を抜けたとこだ』
「はぁ? そんなに来たの?」
『お主が寝ていて静かだったからな。気持ち良く走っていたらここまで来ていた。それより飯だ。存分に走ったから腹が減ったぞ』
本当はどこかの町で宿でも取ろうと思っていたが、これから行って宿が取れるか分からないし、それよりも直近の町が何処にあるかもわからないので、今夜はここで野宿をすることにした。
だけど、薪を拾うにも草原で無さそうだし、どうしようか考えていると。
『おい、魔法で火を起こせばいいだろう』
ルーバの指摘に火魔法が使えることを忘れていた。仕事で火魔法は風魔法との複合で温風を作る事にしか使ってなかったから火を単体で使う発想がかけていたのだ。
魔法を使うついでとばかりに創造スキルに土魔法と空間魔法を使ってテントを作った。
これで夜風は防げるだろうと安心出来たところで夕飯の用意をした。
食事も終わり、テントの中でくつろいでいるといきなりルーバが警戒するように立ち上がった。
『敵意を持った何かが居る。気を付けろ。念のために我が結界を張っておくぞ』
「敵意って、獣でも出て来た?」
『この感覚は獣ではない。人間だな』
「人間って……盗賊かな……」
『とにかく、無闇に外に出るでは無いぞ』
そう言われ俺の中で緊張感が走った。




