第六話 店内をクリーニング?
夕方4時半になり、『うまいっ亭』も夜の営業を開始した。
来る客来る客がテーブルと椅子を見て驚いていた。
「大将、テーブルも椅子も全部新品に替えるほど儲かってたんだな」
「替えてねぇ~よ。代打の新入りが綺麗にしたんだ」
「嘘だろ……傷すら無くなってるんだぜ」
「新品を買おうものなら、5倍位の値上げをしなきゃ無理だろ」
「それにしても凄すぎだろ」
他のお客も「そうだそうだ」と言っている。単に洗剤で洗う感じで拭いただけなのに……
それから欠けもヒビも無くなったお皿やコップを見るたびにお客の声が店内に響いていた。
閉店時間の夜8時なり、お客も全員が帰ったところで店の掃除だ。
俺はサッサと皿洗いを終えフロアに出てみたら、ミハルさんがテーブルに椅子を上げていた。
床の掃除をするようだ。「俺がやります」とミハルさんの言うと、「じゃ~お願ね」と言って厨房に行った。
床は板張りになっていて歩くたびに靴がベタ付く感じでやはり掃除が行き届いていないようだった。
俺はここでも石鹸水を作り、床をベタベタにしていった。5分程置いてから丁寧に水気を取りながら強く擦り汚れを落としていった。それから丹念に水拭きと乾拭きをしたらかなりの汚れが落ち、靴へのベタ付きは無くなっていた。明日ももう一度やればもっと綺麗になるだろうと床を終え、初めから気になっていた壁の掃除をすることにした。
床が汚れないようにタオルで養生をしてから、石鹸水でベタベタになるように壁を拭き、汚れを浮かせる時間も無いので、3度ほど石鹸水でのふき取りを行った後、水拭き、乾拭きと行った。時間も約束の9時を過ぎたところで、いったん手を止め続きは明日行う事にして帰宅の途についた。
その頃、うまいっ亭ではタージとミハルが床と壁をみて驚いていた。
「おい、木目が見える床なんて何年ぶりだ?」
「覚えてない程よ……」
「しかも、こんな短時間でここまで綺麗になるのか?」
「私には出来ないわね」
「オレにだって無理さ。だけどよぅ。皿と言いテーブルと言いアイツが触るやつはみんな新品同様になるってどういう事だ?」
「私に判るわけ無いでしょ。でもここまでして貰ったら何かお礼をしたいわよね……」
「そうだな……何か考えるか」
そんな会話をされていたことも知らずに翌朝9時に出勤してきたチョコラは朝の陽ざしが当たった床を見て満足した笑顔を見せていた。
開店までに一時間。お店の準備だ。椅子をテーブルからおろし拭いていく。箸やテーブル上の調味料を補充して開店時間を待つことになる。
厨房ではタージさんとミハルさんが忙しそうに仕込みを続けていた。
まだまだ開店までに時間が有る……