第五十八話 王家の親友
公爵家に出向いていた間に受けていた約300個の依頼品をなんとか2日で仕上げ、お客に迷惑を掛ける事は避ける事ができたが、俺はヘトヘトだった。この2日は新規の依頼は納期を5日後とかなりの時間を貰っておいたが、騎士団と近衛隊の納品分を終わらせないと休みも取れない状況だが、無理やりにでも今日は休むことにした。その方が明日からの作業能率も上がると考えた。
ティアに臨時休業することを告げるとティアは「では騎士団に行って鍛錬してきます。代わりの者が来るまで外出は控えてください」と言うと俺の返事も聞かずに出かけて行ってしまった。
そんなティアの俊敏な行動でやはり除隊は形式なんだと改めて確信した俺だった。
庭からうまいっ亭に行くと、タージさんとミハルさんが開店準備をしていたので、いつもルーバが迷惑を掛けているお詫びと相談に乗ってもらっているお礼を兼ねて店の掃除を手伝う事にした。
「おう。チョコラ。仕事は片付いたか」
「はい。なんとか間に合いました。だから今日は休みにしました」
「そうか。ならここで掃除などしないで休んでろ」
「いえ、いつも助けてもらっているお礼ですからやらせてください」
「すまんな。チョコラが掃除してくれた後は客も喜んでいる。ありがとうな」
開店時間ギリギリまで掃除をして家に帰ると王太子殿下が待っていた。
「チョコラ殿。お待ちしていた」
「殿下。今日はどうされました?」
「ふむ。本日は国王陛下のお許しを頂きチョコラ殿に勲章を届けに参った」
「勲章って……」
「陛下よりお言葉を賜っている。聞くが良い。『此度はアウロス公爵家が過大なる世話になった。存じておろうが、アウロス公爵家は王位継承権を持つ家柄で我が従弟でもある。その家の難儀を解決してくれたことアウロス公爵より報告をうけておる。そこで、我が王太子の件の折には断られたが、内密に勲章を授ける事とした。拒否は許さん。受け取るが良い』という事です」
「いや……あの時にお断りしたはずですが……」
「今回は陛下より受け取る拒否は認めないとの王命が下っております」
「わかりました……」
殿下の話だと、本来は叙勲式を大々的に行う事になっているのだがチョコラ殿が嫌がるだろうと密かに渡す事にしたそうで陛下最大の譲歩だそうだ。
「では、ここに国王陛下よりチョコラ殿に対し【王家の親友】の栄誉を与える」
王家の親友?? なんですかそれ……
またとんでもない物を持って来てくれたと更に疲れが増したのだった。




