第五十七話 平穏な日々を迎えたい
公爵様の依頼も無事に解決させたことで多大なる謝礼金を頂いた。余りの金額に断ろうと思ったが、公爵様が5日も店を閉めさせた保証も含まれておるとか言うし、ロメーロ様のお言葉も有り素直に受け取り、店まで馬車で送ってもらった。前回のようにルーバに乗せてもらう事も考えたが、途中で謝礼金を落としてもなんだからとお言葉に甘えることにしたんだ。
店先に馬車が止まると中からティアが飛び出してきた。
「店長。ご無事のご帰還おめでとうございます。見事に任務を遂行されました事お祝いもうします。そしてお疲れ様でした」
任務遂行って……大げさな……
「お店の方はちゃんと管理をしていましたのでご安心ください。お留守の間に依頼の品が300点程預かっておりますが、納期は1週間頂いておりますのでまだ時間が有るかと」
「はい?? あと2日で300点を仕上げるの????」
仕上げの引き渡しは頼んだけど、引受は断るように言わなかったか??
言ったよね……言ったはずだよね……
『言ってなかったぞ』
ルーバよ。頼むから追い打ちをかけないでくれ……
仕事は明日から。今日はこのまま休息を取ると決めていたが、そうは行かなくなった。依頼の品を確認し、同じ作業別に分類することから始めた。いつもなら預かったと同時にするから手間はかからないが、ティアにはまだ教えていない。っていうか、本人は護衛が仕事で他の作業を覚える気が有るのか不安でしかない。
有り体に言うと、俺の仕事が増えて居るから近衛隊に帰って貰いたいのが俺の気持ちだ。
とにかく、ティアにも手伝わせて分類を終わらせることにしよう。
分類は、泥の研磨を必要とする武具や包丁や鍋など金属系の物。他には水洗いが必要な物。それには型崩れするものとしない物。また、布製か木製かと素材別など大きく分けている。木製でも泥の研磨が必要な物も有るがそこまで一気には覚えられないだろうから、大まかな所をティアには覚えてもらおう。
「ティア、これから作業別に分類するけど、これを覚えてもらうからね。覚えられない時は解雇するからしっかり覚えてよ」
「分かりました。みごと覚えてみせます」
それから100点程分類しただろうか……ティアは完全に覚えたのかその後はスムーズに分類され、俺の助言も必要なく全ての分類が終わった。
「いかがでしょうか。これで終わりです」
「……うん。大丈夫です」
「それでは引き続きこちらで雇って頂けるのですね」
「そ…そ……そうです」
完敗だった。ティアがこんなにも記憶力が良いなんて思いもしなかった。
「店長。仮初めにも元近衛隊です。担当は経理ですが、特殊任務も担当しており、そちらで必要なのは記憶力が大事な要素なので、急速に覚える事は得意と言っても過言ではありませんのよ」
ティアの勝ち誇ったような言葉になぜか敗北感を味わった。




