第五十五話 謝罪と提案
俺はルーバと共に公爵様とアサロ様を連れてご神木の前にやって来た。お付きの人には申し訳ないけど、見晴らしも良い事から馬車の所で待機してもらった。
「公爵様。アサロ様。これよりご神木に宿る神様に謝罪をしますが、この件に関しては一切他言無用で秘匿しておいてください」
「わかった」
「わかりました」
約束が取れた事で公爵様とアサロ様に俺の真似をするように伝えると、前回と同じようこの木に宿る神様に敬意の礼を取る。
俺が二本の木の前に座り、その後ろに二人が座る。大地に両手をついて深く2度頭を下げる。そして2度柏手を打つ。そしてもう一度深く頭を下げる。それから両手を合わせ神に捧げる言葉を紡ぐ。
それに続いて二人も頭を下げる。
「この木に宿る御神様の益々のご開運をお祈り申します。この木に宿る御神様の益々のご開運をお祈り申します。この木に宿る御神様の益々のご開運をお祈り申します」
ここでもう一度深く長く頭を下げ、感謝の気持ちを込めながら願い事を言う。
「ご神木に宿る御神様のご慈悲を持ちましてアサロの神罰が短い期間で終えられたことに感謝いたします。本日は本人が御神様に謝罪を申したく連れて参りました。また、この地を守りし者から御神様にお願い事が有ると言う事で、かの者も連れて参りましたのでお話をお聞きくださいますようにお願いを申します」
『先日の者か。善かろう。話を聞こうぞ』
「ありがとうございます」
『よい。そなたには我が宿り木を治してもらった礼を考えていた』
「礼は無用にございます。では、二人の話をお聞きください」
神様に向かい一礼をしてからアサロ殿に振る。
「私はトルトン・アサロ・アウロスと申します。この度は御神様の宿り木とは知らず傷をつけました事、誠に申し訳ありませんでした。無知なる行動が許されるとは思っては居ませんが、どうかお許し下さいますようにお願いを申し上げます」
『……………』
「アサロ殿。神様が申すには神罰は終わった、同じ過ちを繰り返さぬように。との事です」
「ありがとうございます。トルトン・アサロ・アウロス、生涯の戒めにしてこれより努めて参ります」
『……………』
「それでよい。次なる者の話を聞こう。と申しています」
「では。私めはこの地を治めているモルハダ・タムタ・アロウスと申します。此度は我が愚息がご迷惑をお掛けし申し訳ありませんでした。御神様のご慈悲を頂き感謝の気持ちで一杯でございます。この感謝の気持ちと謝罪の気持ちを込めまして、御神様の宿り木の前に祠を建て敬い、このご神木を中心に領地直営の放牧場を設け、牛や羊など養いながらこの地を守って行こうと考えておりますが如何でございましょうか」
『……………』
「公爵様。祠は要らぬ。しかし、この地を放牧地にすることは歓迎をする。と申しています」
「ありがとうございます。では祠は控えさせて頂きます。あと、放牧地を囲う柵を造ることはお許しください」
『…………』
「ここには近くの者達が憩いにやって来ておる。その者たちを排除する事のないように配慮せよ。との事です」
「かしこまりました。我が提案をお受け頂き感謝致します」
こうして今回の騒動が収束したのだった……?




