第五十話 チョコラに監視?
公爵様の件で三日も休んでしまった。10日後にはまた行かなければならない。それまでに騎士団と近衛隊への納品分を仕上げないといけない。遅れを取り戻さないと……けっこう大変だ。
裏庭で作業をしているとルーバがやって来た。
『チョコラよ。お主、何か監視される覚えはあるか?』
「監視?ないけど誰かがしてるの?」
『3人がこの店を表から監視して居るぞ』
「そうなの? 裏には居ない?」
『裏からはそのような気配はないな』
俺の知らない所でなにやらおかしな事になっているようだ。副団長さんか副隊長さんが来たら相談してみよう。
だけど俺一人だと不安も強かったのでタージさんにも相談しておこうとうまいっ亭の休憩時間に行くことにした。
いつもだと表から行くのだけど、今日は監視されているから休憩時間に表から行くとタージさんたちも目を付けられるかもしれないから庭の垣根の隙間からうまいっ亭へ行った。
「こんにちは」
「おっ。裏口から来るとは珍しいな」
「お昼は食べた」
「いえ…まだですけど、ちょっと困った話が有って……」
「そう。じゃ~ 一緒に食べなさい。話は食べながら。ね」
用意してくれたご飯を食べながらルーバから受けた監視されている件をはなした。
「……このところ王太子殿下が頻繁に来ていて噂になっているからな」
「そんなにですか?」
「かなりな。騎士団や近衛隊が出入りしていることでも注目を集めているからな」
「それより、誰が監視しているかが問題でしょ」
「そうだな。近衛のカルラはいつ来るんだ」
「……早くて4日後……かな?」
「わかった。ミハル。買い物の振りしてカルラに伝えて来い」
「了解よ」
「後は任せておけ」
副隊長さんがやって来たのはうまいっ亭の夜営業が始まってからで、しかも庭からやって来た。
どうやら夕飯の客を装い来てくれたようだ。
「チョコラ殿。ミハル殿より聞いたが、何者かに監視されているとか。心当たりは?」
「ないですが、王太子殿下が頻繁に来られるようになってからだと思います」
「なるほど。だとすると爵位持ちか……。厄介だな」
「そうだ。これは公には出来ませんが、いま公爵様の依頼も一件引き受けています」
「では、その公爵家か?」
「それは無いかと。次は10日後にこちらから出向くことになっていますので」
「そうか……。ではこちらでも調べてみよう」
「良いんですか。私的な事でご迷惑を掛けて……」
「構わんよ。街の治安を守るのも近衛隊の仕事だ。気にするな」
「ありがとうございます」
ほんと、何の意図があって監視されているのか分からないけど、この状況を齎した殿下に悪態を言いたくなるのだった。




