第四十九話 新たな提案
俺は公爵様の所に戻ると、アサロ様の神罰はあと10日程で解けるので、それまではおとなしく待つ事を勧めた。これ以上何かをして更に神罰が日延べされないためだ。
そしてご神木に宿る神様と交わした約束事を伝え、神罰が解けてから再びこの地に来ることにして一旦、公爵邸に戻ってきた。
今後の事をどうするか……正直な所、これ以上は俺の管轄ではない。俺は原因の一因だったご神木の手入れをしたところで終わりなのだが、神様と交渉して公爵様との仲介役に不本意ながらも付いてしまったようだ。無責任に放置は出来ないか……と諦めた。
思わず思考がずれてしまったが、今考えなければいけないことに集中しよう。大事なのはどうやってご神木を守っていくかだよな……
そう言えば、あの神様は何を司っているのか聞くのを忘れていた。ルーバなら神界の住人だから知っているかもしれないと聞いてみたたら、そもそも木に宿る神はその一帯の自然を守る神で。植物や動物、石や土といったそれぞれの物に精霊を配し自然そのものを守護しているとの事だった。
これを聞いてふと思いついた事があり、公爵様に話してみた。
「公爵様、あのご神木を守る方法で提案があのですが聞いてもらえますか?」
「話してくだされ。どんな事でも聞こう」
「はい。これは一つの考えですが、近くに牧場を作りあの草原で放畜をしてはどうでしょうか? 牛でも羊でも山羊でもいいのですが、広大な草原ですので管理の仕方では餌にも困らないでしょうし、木の前に祠を設けて牧場の者にご神木を守らせて行かれてはどうでしょうか」
「牧場か……それはいい考えだ。領地の産業にもなる。さすれば領益に繋がるな。同時にご神木の管理も任せればわしも安心できる。ありがとう。良い提案だ。さっそく検討に入ろう」
そうと決まれば俺はここに居る必要はなくなった。
「それではお…私はこれにて店に戻らせて頂きます」
「まて、しばらく滞在してくれぬか。少なくともアサロの神罰が解け神様に謝罪させるまでは」
「それは無理です。それをしたら10日以上も店を閉める事になります。それでは俺が…私が困ります」
「……では、一旦戻られることは承知するとして、その時はまたご足労を願うが頼めるか」
「わかりました。ではその時にまたと言う事でお願いします」
「では10日後にまた迎えに参ろう。では馬車を用意する。それで戻られよ」
「ありがとうございます」
こうしてひとます俺は店に戻って来た。