第四十七話 頼りになるルーバ
公爵邸を失礼な程に興味本位で見ながら執事さんに付いて行き通されたのは客間だった。
「こちらが店主殿のお部屋になります。ごゆっくりお寛ぎ下さいませ」そういう言うとお茶を用意してくれた後、下がって行った。
馬車で落ち着けなかった疲れがどっと出てきたが、この部屋もかなりの装飾品がありもし何かあって壊したらと思うとやはり落ち着けなかった……。
部屋に通されてしばらくして、公爵様がやって来て、さっそく息子を見て欲しいと別の部屋に案内をされた。
「これが息子のアサロだ」
見た感じは何処もおかしいと思うようなところは無かったが、ルーバが何かを感じたようで念話を送って来た。
『チョコラよ。この者は神の神罰を受けているようだ。匂いからすると下級神のようだがな』
「はぁ? 神罰?? なんでだよ」
『それは分からぬが、原因を確かめないと神罰を解くことも出来んだろうな』
「原因が分かったら解く方法が有るんだよな」
『それは原因しだいだな』
「店主殿如何なされましたかな?」
「公爵様。申し訳ありませんが公爵様とだけでお話をしたいのですが……」
俺は改めて公爵様の部屋に案内され、国王陛下と同じように他に漏らさないようにお願いをしてルーバの素性とアサロ様が何らかの原因で神罰を受け、今の状況に有る事をルーバが見つけたと説明した。
それからこの状況に至る直前のアサロ様の行動を検証して神罰の原因となった物を取り除かなければならいことを伝えた。
「まさかそんな事になっていたとは……」公爵様の驚きは当然だろう。
ルーバの話では呪いとは違い、神罰は人間では解除することが出来ないどころか、教会でも見つける事すら出来ないらしい。ただ、無期限では無く事例によって差異は有るが自然に解除されるようになっているとルーバが教えてくれた。
という事は、ルーバが居なければ神罰を受けていることを誰も分からなかったのか……
普段アイドル犬をしている所しか見ていない俺としては今日ほどルーバが頼もしいと思った事は無かった。
『今、余計な事考えなったか』
「えっ……別に考えてないぞ」
やばい。心を読まれたのかと思った。
公爵様はアサロ様付きの侍従を呼んで一月以上前からのアサロ様の動向を聞き出していた。
一緒に話を聞いているととある場所の話をした時にルーバが反応した。
『チョコラ。今の草原の話を詳しく聞き出せ』
「公爵様。今の草原の話ですが、もう少し詳しくお聞きしたいのですが」
「もう一度詳しく話せ」
お付きの方の話では、公爵領の北部に広がる草原に離宮を造る事を計画し、整地を進めている中、不自然に立っている二本の木の内一本を切り始めたところ斧や鋸が折れその日は作業を中断して屋敷に戻られました。その後二日ほど雨が降り作業は出来なかったのですが、言われてみればこの日辺りからアサロさまの行動に異変を感じられるようになりました。
『間違いない。この二本の木が神木だな。見に行くぞ』
「公爵様。今からその場所に案内して頂けませんか。実際に見て確認したいことがあります」
こうしてアサロ様も連れて問題の場所に向かうのであった。




