第四十三話 王太子がまたもやってきました
このところ平穏な日が続いていた。仕事も落ち着いて来て自由な時間も作れるようになってきたことで、まだ三か月は経っていないけど、それに近くなってきた事も有り騎士団の仕事を引き受けようかと考えていた。
しかしキッチリ期間は守って欲しいと副団長さんから言われているので一度確認を取った方が良いのかも知れないと思い騎士団までやって来た。
詰め所で副団長さんへの面会を申し出て、通された部屋で待つ事しばし。
「お待たせして申し訳ないです」
「いえ、突然来たのは俺の方ですから」
「チョコラ殿ならいつでも歓迎しますよ」
「ありがとうございます。団長さんはお元気ですか?」
「はい。元気ですよ。死なない程度に仕事させて居られますからご安心ください」
あまり聞かない方がよさそうな気がしたから本題に入った。
「間もなく3か月が経ちますが、武具の手入れはどうされますか?」
「こちらもそろそろお願いに伺おうと思っていた処です」
ではと言う事で確認事項も含めて話しを詰めていった結果、来週から再開して1週間で仕上げる数の上限と下限を決めてその範囲内で納める事になった。それは普通の客に迷惑を掛けずに対応が出来るようにと気を使って貰えた。
用件が済んだことで店に戻ると一台の馬車が止まっており、嫌な予感を感じた。
過去2度も見た? いや、一度は乗ったな…… どっからどう見ても王宮からの馬車だった。
はっきり言って関わりたくない相手だけど店の前に居るのだから無視も出来ない。かといって何処かで時間を潰しても帰るまで待っているはずだ。要は逃げられないと言う事か……
仕方がない。俺は意を固めて店に戻って行った。
「おお~ 店主殿待ちかねたぞ」
王太子だった。どうしてこうも容易く城から出て来られるのかが不思議だよ。
「これは王太子殿下。今日はどのようなご用件で」
「今日は個人的に先日の礼に来た」
「店先で大きな声で言わないでください」
「では中に入ろうではないか」
はぁ~ もう殿下のペースかよ……
「先日は母を治していただき感謝する。どうしても店主殿に直接礼を言いたかったのだ」
「その件は終わった事なので殿下も気にしないで下さい」
「そうか、だけど殿下は他人行儀だ。私の事はクラムと呼んでくれたまえ」
「一般庶民の私が殿下を名前で呼べるわけありません」
「店主殿は母の恩人。それは私の恩人。いや、王家の恩人だ。ところで店主殿は距離感があるな。私もチョコラ殿と呼ばせてもらおう」
「お…私の事は好きに呼んでくれても構いませんが、殿下を名前では呼べませんから」
「それは寂しいな……」
ほんと何しに来たんだよ……