第四十二話 報奨の希望を聞かれました
帰宅するタイミングを失い、第二王妃様が退席するまで見届ける事になってしまった俺はこの時とばかりに陛下に声をかける事にした。
「恐れながら国王陛下。お…私はそろそろ帰らせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「これはすまぬ。その前に此度の礼をせねばならぬな。何か望みはないか」
「はい。報酬は1件につき銅貨5枚と決めていますので、それだけで結構です」
「なんと! 銅貨5枚と申すか」
「はい。それが私の決めた料金ですから」
「陛下。お言葉を挟んでよろしいでしょうか」
「王太子か。どうした」
「はい。基本は店主殿の申される通りですが、ほとんどの客は自身で納得した金額を置いていかれるとの事です」
「そうか。ならば余が決めても良いと言う事だな」
「あの…… 皆さんはせいぜい銀貨1・2枚です。その範囲でお願いします」
思わず釘を刺すような発言をしたけど、放って置いたらとんでもない事になりそうな予感がそうさせたのだ。
「陛下。一つだけお願いがございました。お聞き頂けますでしょうか」
「何なりと申してみよ」
「今回お…私が行った事は内緒にして頂きたいのです。特に貴族の方には……」
「何故じゃ」
「お…私の被害妄想かも知れませんが、貴族の地位を振りかざしてお店に来られても困るからです」
「そのような振る舞いをする者がおるのか」
「ご本人は分かりませんが、お使いの方に多いのは確かです」
「そうか。分かった。此度の件は王家の恥ゆえ緘口令を出すつもりだ。その中にそちの事も加えておこう」
「ご配慮ありがとうございます」
「では、本日はご苦労であった。礼は後ほど届けさることにしよう」
「ではこれにて失礼をさせて頂きます」
帰宅に際して再び馬車で送ってくれると言われたが丁寧に断った。高度な緊張を強いられ疲れていたが、正直王城の馬車では乗り心地が悪い。どうしても緊張してしまうのだ。
帰りは目立たぬように業者専用の門から出してもらい、途中で乗り合い馬車を使って店に戻って来た。
ルーバは走って帰ると言い馬車に乗る時に分かれたが、俺が戻った時にはすでにうまいっ亭でアイドル犬をしていた。
それから数日、近衛隊の副隊長さんがやって来た。
「第二王妃様の処遇が決まったようです。聞かれますか?」
「聞きたくない。俺は王妃様の清拭をする仕事をしただけだ」
下手に聞いてこれ以上関わりは持ちたくないってのが本音だ。
「そうですね。深く関わらない方が良いですね」
「…………」
「そうそう陛下から先日の報酬を渡してほしいと預かってきました」
笑顔で渡された袋には金貨500枚が入っていた。
「こんなに……」
「口止め料も入っていると思いますよ」
サラッと恐ろしい事を言う副隊長だった。




