第四十一話 暴かれた事実
『王妃様。ご正室様がお目覚めされました』の報に焦っていた者がいた。まさか正妃が目覚めると思っていなかったからだ。計画は万全だった。誰にも悟らせることなく5年も眠らせていたのだ。それがたった一人の男…それも一介の庶民ごときに邪魔されるとは……。
「陛下。なぜこちらに? しかも殿下に宮廷医。それと……こちらの者は?」
「そちはこの5年、薬物を使われ眠り続けていたのだ。それをこの者が解いてくれた」
「そうだったのですか。それはありがとうございました。お礼を言います」
「いえ、お…私は対価を頂いて仕事をしただけですので……」
「ところで陛下。なぜ私は裸なのでしょうか?」
「陛下。お…私から説明をしても良いでしょうか?」
「頼む」
「王妃様をそのようなお姿にして申し訳ありませんでした。着られていた寝間着に薬物が染み込ませてあり、代わりの物を用意させるにもお付きのお方が敵か味方か分からないので頼むのもどうかと思いそのお姿のままで布団だけを掛けさせて頂きました」
「そうですか。私の侍女が犯人と申されるのですね?」
「いえ、そう言う訳では……」
「母上。このような企みは一人で出来る事ではありません、身の回りの世話をする侍女が犯人の手先である可能性は捨てきれません」
王妃も納得して頂いたところで、犯人探しである。国王陛下は即座に王宮からの退出を一切禁じた。
もちろん後宮殿も含め、出入りの業者ですら足止めをされた。
王太子主導により行われた調べで、まずは薬剤の管理をしていた薬師が洗い出された。
「確かに私が管理をしていますが、医局からの指示を受けて出しておりました。実際の用途についてまでは確認できる立場ではありません」
「では誰に頼まれた」
「はい。こちらがフグリ草の処方指示書でございます」
そこに書かれていた医師の名を確かめ、即座に国王陛下の前に連れて来られことであっさりと自白をした。
「はい。私は第二王妃様のお付きの医師としてこの国にやってきました。言わば私の主君でも有ります。主君の命は絶対ですからお断わりが出来ませんでした」
「そうか。ではなぜ己の責任で留めておかぬのだ」
「それは……私の素性は調べたら分かります。さすれば第二王妃様の存在は直ぐにでも判明いたしましょう。ですが、これは第二王妃様の嫉妬から行われた行為であり、我が祖国の意図ではない事をご理解いただくためです」
「どういうことだ」
「はい。第二王妃様はもっと陛下にお目を向けて頂きたかっただけです。その思いがこのような事になってしまいました。私も早く事が露見することを望み証拠が残るような振る舞いを致しておりました」
「そうであったか。あい分かった。沙汰あるまで謹慎しておれ」
第二王妃は身の危険を感じていた。急ぎ部屋を出ようとしたところ、衛兵に「申し訳ありません。如何なる方にもお部屋待機の命が陛下から出されております。しばしお部屋でお待ちください」と外出を止められた。
「正妃様へのお見舞いも出来ぬのか」
「如何なるお方でも陛下の命を覆すことは出来ません」
そこに国王陛下よりお呼び出しが掛かった。
陛下の前に来るとそこには正妃様と王太子殿下も居り、これから自分は弾劾されるのだと観念した。
「第二王妃よ。話はお付きの医師に聞いた」
「……もうしわけありませんでした」
「余もそなたに謝らないといけない。寂しい思いをさせていたようだ。申し訳ない」
「私からも謝罪いたします。もっと早くあなたの御心に気付いてあげられたらと思うと……申し訳なく思います」
正妃様から謝罪の言葉を受けて驚いてしまった。
「第二王妃よ。事の原因は余にもある。それを踏まえ沙汰を決める。それまで謹慎を申し付ける」