第四話 野菜をクリーニング?
皿が新品になると言う不思議な現象に誰もが驚きを隠せないまま顔を見合わせていたが「まぁ~ とにかくだ。この話は後だ。今は店だ」とタージさんが話を切ったところでミハルさんもフロアへと戻って行った。
「チョコラ。サラダのトマトが足りねぇ。切ってくれ。いや、サラダに使うの全部だ」
保冷庫からトマト10個を取りだし、軽く洗って水気をきり櫛形に切って行き。容器に入れていく。
サラダ用のレタスはザク切りにしてから貯め水の中に入れ軽く洗い、ザルで水切り。その時適当に布巾で水気を取っておいた。
「おっ、このトマトうめぇな。どこのトマトだ」とお客の声が聞こえた。「ホントだ。いつもと違うな」
「味が濃いって言えばいいのか?」となぜか好評で、それを聞いていたタージさんも鍋の手を止めトマトを摘まんでいた。
時間も2時を回り客足が無くなったところで昼の営業を終え、少し休憩したら夜の仕込みに入ると言う事で、俺は食器を洗い終えたら休憩して店の掃除をするように言われた。
タージさんが賄いを作ってくれて3人で一緒に遅めの昼食を食べる。
「さっき、トマトの味が濃くなったってお客が言ってたけど……」とミハルさんがトマトを食べた。
「あんた。今日のトマトっていつもと同じよね?」
「知るか。ヤオキに聞け」
ヤオキとはここに食材を納めてくれている八百屋さんだと教えてくれた。
「でも、このトマトいつもと違うのよ」
「ホントだな……」
タージさんもトマトを食べて不思議がっていたが、何かを思いついたよな顔になり「ミハル。保冷庫のまだ切ってないトマト持って来い」と変な事を言い出した。
タージさんは俺が切ったのとミハルさんが切ったトマトを食べ比べで何か納得したような顔をした
「「お前は自分の適正職業を知っているのか?」
「いえ、知りません。だけど昨日の夜に不思議な女性からクリーニングをしなさいって言われたけど、クリーニングの意味が分からなくて……」
「俺もそれは聞いた事が無いな……」
「私も初めて聞いたわ」
「だけど、チョコラが洗った皿の欠けやヒビが無くなって新品同様になったり、トマトが美味くなったりと変わるんだ。そこに何かがあるはずだ」
「そうよね……」
「まぁ~ もう少し様子を見てみるか」
「それが良いわ。分からないことをいつまでも考えてても仕方がないわ。その内に判るわよ」
「よし、サッサと食って少し休んだら夜の仕込みだ」
2人の話に俺だけがついて行けないまま暫しの休憩に入ることになった。