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第三十三話 男の子

何時ものようにうまいっ亭の店前で愛嬌を振るっていたルーバがここ数日チョコラの店の前でウロチョロしている小さい男の子を見ていた。手にはボロボロになったぬいぐるみらしき物を持っている。


チョコラに頼みたいのならサッサと入れば良いのにと思いながら見ては居るが、この子がお金を持っているかどうかをルーバは気にしていなかった。


ただ、余りにも思い詰めているような気配にルーバは仕方がないなと言った感じで一肌脱ぐかと決意した。


本来の大きさに戻ったルーバは男の子の襟元を咥えると前足を使い扉を開き裏庭に続く三和土(たたき)を進んでいった。


『チョコラ。この小童の話を聞いてやれ』

「どうかしたのか?」

『連日ぬいぐるみらしき物を持ってお主の店の前でウロチョロしておるのだ』

「そうなの?」


男の子に聞いてみた。

いきなり大きな犬に咥えられて連れて来られた男の子は少し怯えたような感じで戸惑っているようだった。


「大丈夫だよ。そのぬいぐるみを綺麗にして欲しいのかな?」

「…………」

「ちょっと見せて貰っても良いかな?」

「…………」

「君のお名前はなんて言うのかな?」

「……キル…ト」

「キルトくんか。ルーバ…この犬に驚いたのかな?」

「……うん」

「ゴメンね。驚かせて」

「……うん」

「可愛いぬいぐるみを持っているね。見せてもらっても良いかな?」


キルト君はしばらく考えてからぬいぐるみを見せてくれた。

そのぬいぐるみは市販されている物ではなく、誰かの手作りって感じで色々な布の切れ端で造られていた。


「かわいいね、これはウサギかな?」

「……うん」

「この子にも名前が有るのかな?」

「……うん」

「教えてもらっても良いかな?」

「ぴょこたん」

「ぴょこたんか。可愛い名前だね」

「あのね。この子はお母さんが作ってくれて、ずっと僕の友達だったの。でもね、こんど弟か妹が生まれてくるから、その子にあげるために綺麗にしたいんだけど……僕。お金が無くて……」

「うん。わかったよ。話してくれてありがとう。ちょっと待っててもらえるかな」

「どうするの?」

「それは後のお楽しみさ。ルーバ。この子を見ててね」

『吾輩がか??』

「ルーバが連れて来たんだから良いよね」

『仕方がないな……早く終わらせろよ』



せっけん水に漬けてから丁寧に洗ってからタオルを使い水気を切る。好天にも助けられ1時間位でぬいぐるみは乾いてくれた。


「キルト君お待たせ。はい。これ」

「ぴょこたんが綺麗になってる!」

「うん。兄弟思いのキルト君に俺からのプレゼントだよ」

「ありがとうおじちゃん!」


おじちゃん…… おじちゃん…………


『ぶははは~~~~ おじちゃんか…… おじちゃん。これはいい。おじちゃん』

「笑い過ぎだぞルーバ」

『すまぬ、おじちゃん』

「…………」


おじさんと呼ばれたことにかなりのショックを受けながらも綺麗になったぴょこたんを抱えて喜んで帰るキルト君を見送ったのだった。


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