第二十七話 緊急な仕事のようです
朝早くから騎士団長さんがやって来た。何でも辺境の領地で揉め事が起こり沈静に向かう事になったらしく、今日と明日で出来る限りの数を納めて欲しいという事だった。他のお客には申し訳ないが事が事なので今日明日は騎士団を優先することにした。
今日は防具系を中心に行い、明日は剣や槍などをすることにした。何故かと言うと防具は手間が掛かるのと、乾かすのに時間が取られるからだ。
なるべく多くの依頼をこなす為に作業手順を決めて無駄な時間はなるべく無くすようにしているつもりだが、いつもうまいっ亭が休んでいる時間帯はルーバが遊べと言うかの如く絡んでくるので相手をする羽目になりなかなか思った通りには進まない。たぶんルーバが絡んで来なければ仕事をするだろうから、無理やりにでも休ませろとミハルさん辺りから言われているんだと思う。
今日は予めルーバに言っておいた。「今日と明日は遊んであげられないから、仕事を止めるなよ」
『約束は出来んな』とこちらも一筋縄には納得しないようだ。だけど一つでも多く納めたい気持ちだけが強くて知らず知らずのうちに肩に力が入っていたのかな? わずか一言のやり取りだけどルーバに救われたかも。
すでに大きな桶に石鹸水を作り約10分漬け込んである物から作業を始める。その間に次の物を浸けて置くと時間に無駄が無くスムーズに数をこなせ、時間的にも多少無理をしたが150着も仕上げることが出来た。ルーバは言いつけを守ってくれてほとんどをうまいっ亭に居たようだ。
翌日。今日は武器系をやる。庭の土を篩にかけてサラサラの土にして水を加え、簡易的な研磨剤を作る。これが錆落としに結構効果的なのだ。別に砥ぎをするわけではないし磨くだけなので十分なのだ。武器系は防具と違い1個当りに掛かる時間が短いので昨日のように延長する必要なく防具と同数が仕上がった。
こんなに集中して作業したのは初めてだけど、その気になれば一日で出来る数を知ることも出来てある意味良かったのかも知れない。
約束の朝、騎士団長が受け取りにやって来た時に近衛隊の副隊長さんもやって来た。一瞬、団長が不味いなって顔をしたけど、俺は単に近衛隊の人と顔を合わせたくないのだと思ったけど、実はそうでなかったようだ。
「チョコラ殿。今日は我等近衛隊の物をやってもらえるんですよね」
「はい。騎士団の緊急依頼が終わったので大丈夫ですよ」
「騎士団の緊急依頼ですか……?」
チラッと団長の顔を見て、「騎士団では緊急の出陣でも有ったのですか?」
「あっ……あぁ~ ちょっとな……」
「ほう~ 騎士団が動くときは王都の守に関連する事から近衛隊にも連絡が入るはずですが、その連絡はまだ来てなかったように思いますが、後ほど我が隊長に確認致します」
「いや…… わざわざ確認など……」
どうやら辺境での揉め事はウソだったようで、騎士団の仕事を集中して俺にやらせようと企てた事が近衛隊の追及で分かった。
辺境での揉め事が無かったのは良かったけど、タチの悪いウソをついた団長にはお仕置が必要だと思い「向こう3か月、騎士団の仕事は一切お断りする」と言い渡した。




