第二百四十六話 家族団らん?
母さんが夕飯の支度をしている横でマリーサさんもお手伝い。キッカとマルサールは聞かれもしないのに俺の日常を父さんや2人の兄さんたちに話をしている。リョウマ君は俺の横で何をしたらいいのか判らないとばかりにモゾモゾしていたから何もしなくていいと耳打ちして置いた。
俺的には今すぐにでもキッカとマルサールの口を塞ぎたかった。
「お待たせ。晩御飯の用意が出来たわよ」
母さんの声が聞こえ、キッカが運ぶのを手伝いに行き、テーブルには所狭ましと料理が並べられた。と言っても品数が有るわけでは無い。なにせ総勢10人分だからテーブルも狭くなると言う物だ。さらに神獣4匹分もある。それを思うと俺も手伝うべきだったかな……。
「キッカちゃんとマルちゃんだったかしら? 私もチョコラの王都での生活を教えて欲しいわ」
「はい。なんでもお話しますよ」
「もういいから……」
「あら、あなたが話してくれないからキッカちゃんに聞いてるの。邪魔しないで」
「さっきもパパさんに話したんだけど」
「あら、あなたパパさんって呼ばれてたの?」
「そうなんだよ。女の子にパパさんって…… 涙が出そうに嬉しいね」
「うらやましいわ。私も一人は女の子が欲しかったのよ」
「じゃ~ママさんって呼ばしてもらうわ」
「嬉しいわ~ ぜひそう呼んで頂戴」
「はい。ママさん」
「さんは必要ないわ」
「はい。ママ」
「マルちゃんもリョウちゃんもそう呼んでね」
「そうだぞ。チョコラの店の者は家族も同然だからな。わしもパパと呼んでくれ」
呼び方なんかどうでも良いような気もするが二人が喜んでいるからそのままにしておいた。
「それで、チョコラの話しを聞かせて頂戴」
「はい。店長はいっつも面倒ごとに巻き込まれてるんですよ」
「陛下だけじゃなくて?」
「陛下なんか可愛いものよ。なんか面倒ごとを引き寄せる体質なのかなって思った時も有りましたから」
「まぁ~ そんなに……」
「そうなんです。直近ではリョウタの村を悪徳領主から解放させたんだけど、それも宰相さんに乗せられてよ」
「俺の為に店長にご迷惑を掛けて……」
「リョウタが気にすることないわよ。本当は騎士団の仕事なのにそれも気が付かずに店長が好きでやった事よ」
「…………」
それからもキッカの口が閉じる事はしばらく無かった。俺が止めようとしてもマリーサさんまで参戦して「それは私も知らなかったわ。詳しく教えて」とキッカから聞き出していた。
それに伴い俺を見る目がだんだんと呆れたと言わんばかりの冷たい視線を感じるようになってきた。あぁ~居心地が悪いぞ。
うん。もうこれは退散するのが一番と「俺ちょっと村長の所に行ってくる……」
こうして何とか家を抜けたのは良いがその後、マルサールも参戦したらしくキッカ達による俺の暴露大会は俺が帰宅した時もまだ続いていた。




