第二百四十五話 到着しました
クラム陛下から領地を返して欲しいとヘラルド子爵が希望している話を聞いて俺はすぐさま反対をしてしまった。
先代の国王がキャサル村とその周辺10キロを王家直轄領にしてくれたおかげでヘラルド子爵からの無理難題的な租税負担が楽になったからだ。おまけに近くの集落からも感謝され今ではキャサル村を中心として直轄地内にある全集落が一つに纏まっていた。そのせいか4年計画で村中の家を修繕するはずだったが、集落の家も見て回って損傷の激しい家を修繕して欲しいとこの旅に出る前に村長から手紙を貰っていた。
話しは逸れたが、王家の再調査の結果、金鉱脈と銅鉱脈を見つけている。特に銅鉱脈は廃坑になった銅鉱山の近くから見つかっていることからその存在を隠していたのではないかと言う疑いも持たれた程だ。もともとキャサル村も周辺の集落の人も男は銅鉱山で仕事をし、年寄りと女性陣で畑仕事をしてきた事も有り再び銅鉱山を開山したことで子爵が目を付けたとも言えた。
話しを聞いた俺も村の人たちが領主を子爵に戻して欲しいと嘆願するとはとても思えない。なぜなら直轄地の村に納税免除の特典を付けそれが今でも続いている。鉱山が閉山してから過重な納税で苦労をしてきた村民が当時の領主である子爵を支持するわけがないからだ。
では何故あのような嘆願書が有るのか……
きっと捏造したのかもしれない。それをクラムも疑っているのだ。
翌朝、キャサル村に向け出発した。ここからなら早ければ夕方には着く距離だ。
この時すでにクラムがキャサル村の村長に早馬を飛ばしていた事など俺は知らなかった。
旅程は順調に進み、予定通り夕方には村に付いた。
街門にはすでに村長をはじめ村の人達が出迎えてくれていた。
「陛下。長き旅路、お疲れさまでした。ご無事のご到着に安堵いたしております」
「村長殿。出迎えご苦労です。それより早々に例の話を」
「かしこまりました。すでに周辺集落の長達も集まっております」
「チョコラ殿。ありがとう。楽しい旅でしたよ。最後に水を差されましたけどね。それも余興と思えば楽しいのかも知れませんがね」
「いえ、こちらこそありがとうござました。俺も明日から仕事に入るのでゆっくりは出来ませんけどね」
「おぉ。チョコ坊よ。手紙でも頼んだが今回は周辺集落を重点的に頼むぞ」
「はい。わかっています」
こうして久振りの実家に帰って来た俺は家族のみんなに改めてマリーサさんや店の子たちを紹介した。




