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二百三十七話 寒天がありました

キャサル村行きが決まったことで、俺はジュグレさんの元に来ていた。リョウタ君を連れて行けないか相談するために。

ジュグレさんは即答で許可をくれた。理由は「今のうちに多くの物を見ておくことが大事」という事からだった。多分、リョウタ君が知っているのは自出のアスナル村と王都くらい。しかし、王都でも全部を知っていると言うわけでは無いはず。って、俺もそうだけど……

どうしても生活に必要な範囲でしか動いてないから王都でも行った事が無い場所はかなりある。

今回はルーバに乗って行くわけでは無いから移動に日にちが掛かるからその準備も有り10日後に出発することにしてあるのでそれに合わせてリョウタ君に休みをくれる事になった。


次に騎士団、近衛隊と回り、出発までの納品数などを決めて来た。これでクラム陛下にも瞬時に話が伝わるだろうと思うと気が重くなってきた。


あとはアントンだけど……どうするか。


ダメもとで医学学校に出向き話をしたところ「キャサル村へは卒業して医師の資格を取ってからでも行けるけど、勉強は遅らせるわけには行かないから」と断られた。


でも内緒で行くよりアントンの希望を聞いた結果だから好しとした。


これで長期に店を閉める根回しが済んだので市場へ買い物に向かった。


いつものように適当に見て回って居たら乾物屋の女将さんから声が掛かった。


「チョコラちゃん。待ってたよ。前に聞いていたカンテンだっけ? 見つけたから仕入れておいたんだけど、言ってたので間違いが無いか見てくれないかい?」

「えっ、寒天が有ったんですか! ぜひ見せてください」


ちょいとお待ちよと言って奥から束に縛った寒天を持ってきて見せてくれた。


「私も使い方を知らないからね、まだ誰にも売って無いんだよ。チョコラちゃんが言ってたのと同じならこれの使い方を私にも教えてくれないかい」

「うん。これで間違いないよ。ありがとう」

「そうかい。良かったよ。それで……」

「使い方だよね。いいよ。今からでも良ければ台所を貸してくれないかな?」


女将さんは奥から店主を呼んで店番を交代すると、俺を台所に通してくれた。


「今は基本的なことだけ教えるね。寒天はお湯に溶けて冷めると固まるんだよ。これを利用して色々ものを固める事が出来るんだよ」

「そうなのかい?」

「うん。実際にやってみるね。寒天は使うから使う分だけ用意するんだよ。まずは水。今日は分かりやすく200CCを使ってみるね。水100に対して寒天4gが基本だよ。それで柔らか目が良いときは1gに減らし、固めが良いときは2g増やすなど寒天の量を調節することも出来るしね」

「ちょっと待っておくれ。いまメモを取るからさ」


そういうとメモ帳を持ってきた。


「寒天はさっと水洗いをして付いているゴミや汚れを落とすんだよ。それから最低でも30分。できたら2時間は水につけて戻しておくと後で溶けやすくなるんだけど、今日は時間がないからこのまま行くね」

「大丈夫なのかい?」

「任せて。鍋にお湯を沸かしたら溶けやすいように細かくちぎって入れるんだ。火を弱めて2分~5分程煮ると溶けて行くから……。ほら、こんな感じに」

「ほんとだ。溶けて無くなったね……」

「完全に溶けたら茶こしで濾すと良いよ。溶け切って無いとかを取り除くと固まった時の食感が良くなるんだ」


そう言う事で女将さんに茶こしを借りた。


「今日はここに少し砂糖を加えて固めようか」

「砂糖かい。ほら使いな」


砂糖を5g程入れて良く溶かし、適当な容器に移して固まれば出来上がりだ。


待つこと1時間。寒天が固まった。甘く味が付けてあるので食べやすい大きさに切って試食。


「これがあの寒天かい?」


店番をしていた店主が驚いていた。


「そうだよ。わたしゃ始めから見ていたからね、間違いないよ」

「そうか……」

「でもこの食感が良いね。見た目が透明で綺麗だし、歯ごたえも有る」

「今日は単純に溶かして固めただけだけど、牛乳に溶かした寒天を入れても良いし、フルーツをこれで固めても美味しいよ」

「あんた、これ売れそうかい?」

「どうかな……。試食しながらじゃないと無理だろうな。これがコレに変わるなんて想像もつかないからな」


店主さんはそう言いながら棒寒天と寒天を見比べていた。


「えぇっと…… これ袋ごと買いますのでお願いします。あと、数日もしたらきっとコミュレットが買いに来ると思いますよ」

「本当かい?」

「はい。間違いないと思います」


自信をもって伝えたら店主さんも女将さんも安心したようだけど、いったいどれだけ仕入れたんだろう??

聞くのも怖かったから聞かなかったけど、念願の寒天を手に入れた俺はすでに作る物が頭に浮かんでいた。


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