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第二百三十五話 反撃に出てみたら

俺が提案したのは課税のタイミングと借地借家に税金を掛けるもの。

実は、すべてマリーサさんの入れ知恵なんだけどね。だって協定だの税だのなんて俺にはさっぱり分からないし……


協定には輸出入の規定やその時に掛ける課税に対する決め事は有ったが、決算に対する課税において本店ではなく、支店が所在する(くに)の課税制度を用いると書かれていた。

更には国内においての環境や待遇、地位の保証についてはまったく書かれていなかった事からそこに目を付けたのだ。

また、重要欠陥事項として、脱税が認められた場合は国内資産を全て没収の上、国外追放に出来る事になっていた。


それで、改定案の内容はこうだ。


外国籍の企業が当国内で活動するにあたり、当国が定めた時点において課税が出来ることから今までのような決算時でなく、仕入時に掛けると言う物だ。これは消費税の応用ともいえる。

って、消費税ってなんだ?? 


とにかく、これは販売(輸出)時に掛けるのでなく、仕入れた(買取った)段階で掛けるので協定には抵触しない。その代わりに販売(輸出)時の税金は廃止することにした。また顧客に課税分を転嫁してはならないと言う項目も付けられた。それと家屋についても課税を強化した。

これは持ち主へ掛かる固定資産税を相手が外国籍の企業なら全額借主に転嫁できると言う内容だ。もちろん又貸しは国民でも禁じられているから個人で借りて企業が使うという事は違法になる。


これら一連の法改正はラプチャー商会に脱税をさせることに目的がある。違法が見つかりしだい罰則を与え、国外追放と出来るからだ。


どれも国内法を少しなぶるだけだったので即日陛下の認可を取り、発布された。しかも現行の税法で認められている追徴請求期間である5年も遡っての施行であった。


それと同時に国が指定する重要スキルを保持する者はそれを届け出、国外に転居する時には国の許可が必要になった。これは人材流出を防ぐ事を目的としたものだ。もちろん鑑定師も指定スキルになった。俺?俺はと言うと…… 王家の友人は貴族待遇なので国外転居自体が禁じられているらしい。


初めて知ったよ。


しかし、マルサールを守るためにここまでするかと思うかもしれないが、他国の商会に目を付けられたという事はマルサール以外にも有益なスキルを持った人が狙われているかも知れない。最悪、何かしらの危害を加えられるとかされたら一大事だからね。


それに、宰相さん曰く、この協定は先代陛下が内容もよく検討せず勝手に結び、条文もナメール王国が作ったもので、出来たら破棄したいのが本音らしい。

あと、我が国内で実店舗をもつ他国籍企業はラプチャー商会だけなので他の行商人レベルの商会には今回の改正でまったく影響がないとの事から、話がスムーズに進んだのだ。




一方、ラプチャー商会では……


「なに~~~ぃ 仕入れに課税されるだと!」

「はい。課税分の転嫁も禁止です。その代わり販売時の課税が無くなりました。両方とも即日施行だそうです」

「税率はいくらだ?」

「はい。3割5分です」

「さ…さんわり ごぶぅ~~~~」

「はい。間違いございません」

「ほ…ほかに改正されたのは何だ」

「借地と借家も課税されることになりました」

「家賃の他に……か」

「はい。固定資産税は全額借主が負担すると言うことです」

「全額だと……」

「はい。店子が求める過剰な改築費用が通常の家賃だけでは賄え切れない事から決まったようです」

「……それは協定違反にならんのか!」

「弁護士の意見も聞きましたが、輸出時で無い限りどの取引段階(タイミング)で課税するかは協定では定められておらず、抵触はしていないとの事でした……」

「……借家についてはどうだ!」

「結ばれているのは貿易協定であり、地位や環境などの在留待遇は問題提起も出来ないとか……」

「それではこの国に多額の税金を払う事になるではないか! どうにか出来んのか!!」

「本国に連絡をして対抗策を講じてもらうしかないかと……」

「それで解決するのか?」

「それは分かりません。もともとこの国の者が我が国で店を出してはおりませんし、協定の変更をこの国が受け入れるかどうか……」

「……まったくなんでこうなった!!」

「一つだけ、心当たりが……」

「何だ、言ってみろ!」

「はい。王家のご友人という方の店の者を引き抜こうとしたからではないかと……」

「…………」



その後、税務省は即座にラプチャー商会へ査察に入り、追徴課税を含め多額の税を払わせたのと、本年度分もかなりの取引を隠ぺいしていたことが発覚。これが脱税と認定され、残りの資産も没収され国外追放処分となった。これによりマルサールへの接触も無くなった。


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