第二十三話 騎士団長がやって来ました
ルーバがうまいっ亭のアイドル犬になってからルーバ目当てのお客が増え、昼も夜も忙しさが増してタージさんもミハルさんも悲鳴をあげていた。当のルーバは時折お客さんからお裾分けを頂き喜んでいた。
まぁ~ 売上げが上がることは良い事だ。本当なら俺が2人に恩を返さないといけない分、ルーバに頑張ってもらおう。
そんなある日、うまいっ亭が昼休憩に入った時に俺を訪ねて客が来た。
「初めまして。君がチョコラ殿か? 私は王国騎士団団長でゴーラル・ゴードンという者だ」
「チョコラです。初めまして」
「実は貴殿にお願いが有ってやって来たのだが、ぜひ引き受けて頂きたい」
引受てって……、肝心な用件も聞かないで返事など出来るわけない……
「あの…何を俺にしろと言うのですか?」
「そうであったな。騎士団の所有する剣と槍。それと鎧のすべてをクリーニングして欲しい」
「えっ…… えぇっと…… 無理です。出来ません。どれだけ在るが分かりませんが、他のお客さんのが出来なくなりますから……」
って、なんで騎士団が来るんだ?しかも団長さん自ら…… それに専属で手入れをする人だって居るはずだよな。俺が出しゃばったらその人はどうなるんだよ。そんなことを考えていたら団長さんが
「実は街の噂を聞いて2・3度貴殿に鎧と剣をクリーニングをして貰ったら、両方とも補修されてただけでなく、強度が上がっていた。これは鍛冶職でも出来ない事だ。だから貴殿に手入れをして欲しいのだ」
噂を聞いたって、どんな噂があるの??
「謝礼はそれなりに用意をしているし、出来たら定期的にお願いをしたいのだ」
「えぇっと……やっぱり無理です。どんな噂が出てるか知らないけど騎士団の大事な剣や鎧は俺には無理です」
困惑しながらも断っていたらタージさんに救いの視線を向けると、仕方がないと言った感じで話に入って来てくれた。
「団長殿。チョコラの噂とはどんな噂ですか」
「あぁ、冒険者達の間でここで手入れをして貰うと刃こぼれや傷が無くなり、その後は刃こぼれや傷が付きにくいと聞いてな、俺も試しに昔使っていた剣と鎧を手入れしてもらったら噂通りだった言う事だ」
「それで、どうして騎士団の物を? 専属の鍛冶師が居るのではないですか」
「確かに騎士団専属の鍛冶師は居るが、無駄が多い。その為……恥ずかしい話、予算が足りんのだ。
そこで新たに造るより、チョコラ殿に手入れをして貰おうと言う話になったのだ」
「しかし、チョコラは他の客に迷惑を掛けるから無理だと言っている。そこのところを考えてやれば良いのじゃないのか?」
それから騎士団長さんが考えて出したのが一日10組づつを持ってくる。代金はその都度払うと言う事で他のお客にしわ寄せが出ないようにするという提案に、タージさんがそれで引き受けてやれと言うので俺は承知することにした。