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第二百二十九話 リョウタ君の誕生日~後編~

適職(チート)付与の儀を受けるつもりだったのが神父様の計らいで神職目録の儀を受けたリョウタ君の結果がパテシェだと聞いて環境支援はいくらでも出来る。しかし技術支援は素人の俺にはとても無理だ。またジュグレさんに相談するしかないか…… 『俺に任せておけば大丈夫と』大見得を切ったのは良いが、冷静さを取り戻した今はそう思い始めていた。


でもそんなことは後だ。今はお誕生日会の事を考えようと気持ちを切り替えた。


店に戻るとリョウタ君は仕事に戻り、俺はうまいっ亭で料理でも作ることにした。

タージさんが今日は少し早めに閉めて店を会場として使わせてくれると言ってくれたからお言葉に甘えたのだ。と言ってもいつも甘えているんだけど……。


厨房の片隅でから揚げの準備から始める。これは下味を付けて馴染ませるのに少し時間が要るからだ。それから野菜のゼリー寄せ。これはゼラチンを溶かしたスープで、あらかじめ茹でておいた色とりどりの野菜を入れ冷やし固めた物。見た目が綺麗だ。

それから薄めに切った固めのパンをトーストにして卵やツナを乗せたものなど。あとは自由に乗せられるように何も乗せていないのも用意しておく。

他にも自分の家で昨日から下準備して置いた焼き豚も煮て行く。

後はサラダを作ってみた。


うまいっ亭の夜営業は一時間早めての閉店となった。俺も片付けを手伝い、レーちゃんにお願いをして店中を飛んでもらった。結果は言うまでもないだろう。


店の飾りつけまでは出来ないけどテーブルに出来た料理を並べていく。この間にタージさんもいくつかの料理を作ってくれていた。


準備が整い、リョウタ君を呼びに店に戻った。俺の姿を見たマリーサさんはマルサールとキッカを連れてコソっと裏からうまいっ亭に移動した。


俺はリョウタ君を連れて表からうまいっ亭に移動する。

いつも裏から行く習慣が出来ていたリョウタ君は不思議な顔をしていたが、主役のリョウタ君を裏口からは連れて行けないよね。


リョウタ君が店に入った瞬間、みんなから「おめでとう」の声と拍手が起こる。

一瞬、足が止まった感じだったけど顔は嬉しそうにしていたんだろう…… リョウタ君の後ろに居た俺には背中しか見えなかったのは残念だよ。


「ありがとうございます。お祝いをしてもらえるなんて…… 思っても居ませんでした……」


声がだんだん泣き声になっていったよ。


「泣いてないで、ここに座って」


マリーサさんが主役席に案内をしてくれた。


「じゃ~、始めるわよ。みんなグラスを持って乾杯しましょう」


早々に仕切りだすキッカ。おい、それは俺の役目だろうが……


「リョウタ君の15歳の誕生日を祝してカンパ~~イ!!」

「「「「「「カンパ~~イ」」」」」」


マルサールの発声で乾杯。良いところをキッカとマルサールに取られてしまったよ……。


その後は大いに食べて飲んでおしゃべりをしてリョウタ君から適職や適性魔法が何だったかを発表し、パテシェって何だって事になったから俺が説明をしたあと、いよいよお手製のケーキを披露した。


「すごい…… これ何?」


キッカの反応に


「これはお誕生日ケーキだよ。リョウタ君のために作っておいたんだ」

「僕のためにですか……」

「そうだよ。15歳の誕生日は特別な日だからねえ」

「ありがとうございます。こんなに嬉しいことは初めてです」


そう言って泣き出してしまった。


「リョウ。店長はお前の泣き顔が見たいんじゃないぞ」


そっとフォローをしているマルサール。

リョウタ君も涙を拭きながら笑顔を見せてくれた。


「それにしても豪華よね。上に飾ってあるだけじゃなくて横にまで果物が飾ってあるわ」

「それはな、クリームが上手く塗れなかったから果物を貼って誤魔化したんだよ」

「タージさ~~ん!」


なに暴露してくれてんのさ! これでも一生懸命に作ったんだからな!!


「本当だ。よく見るとクリームがデコボコしているわ。そっか…店長にも苦手なことはあるのね」

「当たり前だ!」


キッカの突っ込みに爆笑が起こった。


それからケーキを切り分けみんなで食べた。見た目の誤魔化しは笑われたけど味は好評だった。


「リョウタ君。ここでデザートと言われているが別の言い方でスイーツと言うんだけど、これを作る職人さんの事をパティシエって俺の国では……」


俺の国?なんだ? また変な事を言ったな……


「とにかく、スイーツ職人がパテシェ。リョウタ君がこれから目指す仕事だよ」

「はい。でも、どうしたらなれるんですか?」

「それは俺も考えているから任せておけばいいよ」


こうしてリョウタ君の誕生日は楽しく時間が過ぎて行った。


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