二百二十三話 二日目は見世物でした
昨日の疲れは取り切れていないけどお日様はいつもの様に顔を出す。
今日はコミュレットの別館、パーティーパーティーで一般市民に向けた披露宴をするらしい。
と言うのも昨日と同じで何も聞かされていない。いったい何をさせられるのやら……心配だ。
そう言えば昨日の夜からアントンが帰って来ている。なんでも英雄様の披露宴に誰でも参加が出来るという事で学校が休みになったんだとか。まったく学長は何を考えているんだか……
「店長。私たちは準備が有るから先に行くけど、店長には迎えが来るからそれで来てね」
キッカがそう言い残しアントンとマルサール。そしてリョウタ君を連れて出て行った。
それから暫くして迎えの馬車がやって来た。昨日とは違い今日は一台で俺とマリーサさんが向かうらしい。馬車が会場に着くとそこには多くの人がすでに集まっていてジュグレさんが迎えてくれた。庭を歩きながら辺りを見回すと多くの屋台が並んでいた。ジュグレさんの話では俺がタージさんに教えた料理をすべて銅貨1枚で売り、その売上金は全額、教会を通じて国中の孤児院に寄付されるらしい。そして一番のメインイベントは俺とマリーサさんとの握手券だ。これは銅貨2枚で売られ、屋台の利用券も2枚付いているから実質俺たちは良い宣伝役だ。
すでに握手券の発売は開始されていてかなりの数が売れているからもしかしたら休憩時間は無いかもと聞かされた。まさか本当にそうなるとはこの時は思いもしなかったが蓋を開けてみたらかなりの行列に言葉も出なかった。
俺たちが所定の場所に着くとジュグレさんから案内がされた。
「皆様、お待たせを致しました。ただいま我が王都の英雄、チョコラ殿・マリーサ婦人によるご結婚記念の握手会を開始いたします。握手券をお持ちの方は係員の指示に従いながら順番にお二人と握手をさせて頂きます。また、本日出店している屋台は英雄チョコラ殿が発案した料理ばかりです。握手券に付属の屋台利用券は一枚で一食分としてどの屋台でもご利用頂けます。なお、屋台で直接お支払い頂くこともできますので利用券をお持ちでない方もぜひご利用下さい。
それでは握手会の開始です。一言程度の会話もできますので短い時間ですがお二人との交流をお楽しみください」
「「「「「「「うぉ~~~~~~~~~~~」」」」」」」
なんで歓声があがるの…… 怖いよ……
それから「おめでとうございます」とか「感激です」とかいろいろ言われながら握手をこなしていく。途中の喉が渇いてもトイレに行きたくてもとても何か言える状況でなく次々と進めて行かないと減って行かない。ってか、行列が長くなっているような気がする。
結局10時から始まった握手会は17時過ぎまで続いた。握手券の販売も15時に販売が終了したけどこれも予定時間に終わらないだろうとの判断からだが、一体何人と握手をしたのだろうか……正直手が痛い。みんな力いっぱい握って来るから痛くもなる。
最後のお客さんと握手し終わる頃にはあれだけ居た人も少なくなりすべての人が帰ったのを見届けて長い長い2日間が終わったと思った。
が、そうはいかなかった。
「これからスタッフ達と打ち上げをしますからそちらにも出席してくださいね」
もうかんべんしてくれ~~~~~~~~~~~~!
そうしてやっと解放されたのは間もなく日付も変わろうとしている時だった。
因みに一番売れた屋台の品は新作のハピネスロールだったと聞かされた。




