第二百二十二話 さて、言い訳を聞こうか
数多なる貴族の甘言を断りつつもちゃんと笑顔が保てているかなと別な事を考えながら対応をしていたら、ジュグレさんの進行アナウンスが入って安心した。
「本日は多くの方にご臨席頂き、盛大で和やかな雰囲気の中で進んでまいりましたこの宴もそろそろお開きの時間になりました。ここで本日の主役、チョコラ殿よりお礼のご挨拶をさせて頂きます」
えっ、聞いてないよ…… でも俺たちの為に来てくれたんだからお礼を言うのは当たり前か……
再び壇上に登り集まってくれた人たちに簡単だけど挨拶をした。
「本日は多くの皆様が私たちの為に貴重な時間をくださり、このように盛大な披露宴にして頂けました事を心より感謝しています。ありがとうございました。なにぶん短い時間でしたので全員の方とお話しすることが出来なかったと思いますが申し訳有りません。また、裏方として互助力頂けた皆様にも感謝いたします。簡単ではありますがお礼の言葉とさせて頂きます。本日は誠にありがとうございました」
よし、無難に纏めたぞ。今の内容なら後から揚げ足を取られることは避けられるだろう……
そんな事思っていたらスタッフの方にお開き口へ案内された。これからお見送りをするそうだ。
「これを持ちまして王家のご友人、チョコラ殿とマリーサ様の結婚ご披露宴をお開きとさせて頂きます。これよりお二人がお開き口にて皆様をお見送りさせて頂きますので、お開き口に近い方からお進みください」
ジュグレさんがお開きの宣言をすると自然に会場の中央が割れだしたと思ったら道が出来た。そこを優雅に通って来たのは国王陛下。
「チョコラ殿、今日はお見事でした。さすが王家の友人。これで無事に社交界にデビュー出来ましたね」
「デビューしたつもりは無いけどね。それよりこのあと時間が有りますか?」
「作ることは出来ますが、今は作りたくない気分ですね……」
「そうですか。では作ってください。王家の友人としてのお願いですからね。控室で待っていてください。逃げたら店への出入りは禁止ですからね」
「おや、交渉がまた上手くなりましたね。わかりました。待っていますよ。店への出禁は困りますからね」
それからは順位不同で案内通り、入口に近い人から次にやってきて、軽い挨拶をしながらも全員を見送って控室へと戻って来た。
「お疲れ様でした」
部屋に入ると一番初にクラムが労いの言葉を掛けてくれた。
「ありがとう。それより聞きたいことがあるんだけど、俺にマリーサさんと引き合わせる前からこの話は決まっていたの?」
「あぁ~ もうバレていましたか……」
「バレてじゃないよ! どういうことですか!」
「おめでたい日に怒ってはいけませんよ。すべてはチョコラ殿ためです。だからジュグレもタージもキッカさんでしたか? 広場の店を任せた子は……。その子も協力してくれましたよ」
「はぁ~ キッカまでもか……」
タージさんまでは納得したけどキッカまでグルだったとは……
でもジュグレさんから話をされたら協力していてもおかしくないか……
「大体ですね。28になっても独り身で浮いた話の一つもない方がおかしいのです。だから周りがお節介を焼きたくなるのですよ。わかっていますか」
「そりゃ… そうかも知れないけど、初めに俺の気持ちも聞いてくれても良かったじゃないですか」
「聞いたらどんな返事をくれました?」
「そりゃ…………」
「でしょ。だから強引な手を使っただけです」
「じゃ~どうしてマリーサさんだったんですか」
「働き者で気も回る。押しの弱いチョコラ殿を支えるのにはピッタリの相手だからですよ」
「それ、口裏を合わせてますよね?」
「さぁ~ どうでしょう。意見の一致だと思いますけどね。それに身分は平民でも私の従妹ですからね。王家の友人殿に預けるなら私も安心ができます。それともどこかの貴族の娘がよかったですか?」
「いや、貴族は遠慮するけど……」
「そうでしょ。ちゃんと考えての結果です」
「…………」
なんか逆に丸め込まれた気がしてならないよ。
でもこの二週間のマリーサさんを見ていたがクラムが言う通り、よく働いてくれるし店の子やお客さんにも善くしているし、俺が抜けている所もさりげなくフォローしてくれていた。
クラムの謀り事と判明したけど今回ばかりは感謝して置くことにした。




