第二十二話 ルーバはアイドル?
ルーバが小型犬程になってくれたことで部屋のスペースも確保出来たのは良いけど、何かを忘れている気がして思い出そうと意識を集中した。
あっ、思いだした。仕事行かなきゃ……
「ルーバ。俺は仕事に行ってくるから留守番を頼むぞ」
『お主が何をしているのか吾輩も見てみたい。ついて行くぞ』
「えっ? 来るの??」
『なんだ。見られては困るのか?』
「いや……そんなことは無いけど……」
『ならば構わんだろう。ほれ、行くぞ』
「分かったけど、人前では絶対に喋るなよ」
『ワン。これで良いのか』
「…………」
シルバーウルフの威厳は何処にも無かったけど、騒ぎになるよりは良いか……
うまいっ亭に着いたのは昼を過ぎたころで、店の前にはいつものように列が出来ていた。
その列を除ける様に裏から庭に行こうとすると、列に居たお客から「チョコラ、犬を飼いだしたか」とか「可愛い犬だな。触ってもだいじょうぶか」など声を掛けられた。
下を見ると媚びを売るかのように尻尾を最大限に振っている。すでにアイドル化してた。
みんなに撫でられたり抱かれたり、おやつをくれる人も居たほどだ。
庭に入って裏口から声を声を掛ける。「おっ、今日は休みかと思ったぞ」とタージさん応えてくれた。
しばらくしてミハルさんが「チョコラ君が犬を連れて来たんだって」と、どうやらお客に聞いたようだ。庭に出てくるとルーバを見つけてかまい出した。その後にはミリアさんまでやって来て「思ったより小さく可愛いわね」と。
お店が落ち着いてきたころにルーバにと切り出しのいつもなら捨てる肉を持って来てくれた。
それを嬉しそうに食べるルーバを見ながら「こいつはただの犬でないな」といきなり核心をつかれた。さすが元高ランクの冒険者だ。どう説明をしようか……
『吾輩は神界に住むシルバーウルフだ。訳あってチョコラの世話になっている。名はルーバとチョコラから貰った』
なにいきなり喋ってるんだ……
「そうか。お前がチョコラに危害を加えないのならそれでいい。黙って見ていよう」
『チョコラは吾輩の恩人だ。恩人に危害を加えるようでは恥ずかしくて神界に戻れぬわ』
なにやら二人の間で火花が散った感じもしたけど、大丈夫だろうと俺は仕事の遅れを取り戻すように仕事に集中した。
うまいっ亭は夜の営業を迎え、俺はいつもの皿洗いや簡単な盛り付けの手伝い、ルーバは……
お店の外で尻尾を振り振り愛嬌を振りまいて客引きをしているとミハルさんから聞いた。お蔭で今日はルーバの事ばかりを聞かれてなかなか注文をしてくれないと困った?ようには見えないけど、困ったと言っていた。




