第二百十八話 挙式の準備にチョコラは要らない
すでに俺の知らない間に挙式・披露宴の準備が進められていた。お付き合いの期間も婚約の期間も全く無くにだよ。
そして後から知ったんだけどその中心人物はジュグレさんだった。
頻繁にマリーサさんと打ち合わせをしているようだが本当に俺は何も聞かされていない。
その理由は簡単。反対されないためらしい。
唯一来た話は田舎から家族と村の代表数人、国が用意した馬車で来るという事だけ。もちろん俺からは知らせてはいない。どうやら陛下から村長経由で両親に伝えられたらしい。
今の段階で唯一、俺が関わったのは衣装の採寸だけ。ジュグレさんの手紙に書いてあった日に担当者がやってきて数点の衣装の中からデザインを選び、サイズ調整をするという。
しかし、そのデザインもマリーサさんの衣装に合う物を選んでからそれに見合う物が選ばれ俺の意見は聞かれていない。
そんな折り、ジュグレさんからコミュレットと新館・パーティーパーティーをクリーニングをして欲しいと依頼が来た。それも今週中に完了してほしいと急ぎの依頼だった。
今週中と言うと今日を含めて5日しかない。どうして急いでいるの分からないが、ジュグレさんから話を聞くいい機会だと思い早々コミュレットに向かった。
「これはチョコラさん。お久しぶりです。今オーナーに取り次ぎますね」
いつものように業者用の出入口にある受付で声を掛けようとした時、先制された形で言われたから暫く待っているとジュグレさんがやって来た。
「お待たせ致しました。今回はこの店と新館の両方を全面的にお願いします。急な急ぎのお願いですが宜しく頼みますね」
「両方の店を全面的に…ですか?」
「そうです。明日から両店は1週間お休みをしますが、クリーニングは今週中に終わらせてくれれば良いのでチョコラ殿が都合のいい日に仕事をしてください。ただし、期日は厳守で。これだけはお願いをします。では私は急ぎますのでこれで」
「あ…あの……」
ジュグレさんは言いたい事だけ言って何処かに出かけて行ってしまった。
あぁ~ 聞きたかったことが何も聞けなかったよ……。
とにかく、今週中に両店を全面という事なので今回はレーちゃんと親鳥さんにお願いをすることにした。自分でやっても良いかなと思いもしたが、それだと最低でも本店は3日、新館でも2日は掛る。とても間に合わない。背に腹は代えられないと判断しての決断だ。
レーちゃんと親鳥さんにお願いをすると2つ返事で了解してもらえた。
やるなら早い方が良いと次の日にレーちゃん親子を連れてコミュレットにやって来た。
「今日はこの店で明日は新館をお願いします」
『ご主人様~ レーちゃんね、頑張るなの~』
「レーちゃん。よろしくお願いね」
『はいなの~』
「親鳥さんもお願いします」
『……了解した』
さすが不死鳥の親子。再生能力が半端ない。あっという間に終わった。仕上がりは当然と言うべきか新築同然。外壁の水垢汚れも無くなり塗料も塗り替えたように綺麗になった。店の中の床も何処にも汚れが無く照明の光を反射させていた。
この調子で新館も同様に飛んでもらい両店の作業はわずか2日で終わることが出来た。本当なら1日で両方とも出来そうだったけどそれだと説明がしにくいからね。
両方の店が終わったのでレーちゃんと親鳥さんにお礼を言って、家に戻ってから特別なおやつを出して上げた。
コミュレットの休業最終日にジュグレさんから作業代を払うからと呼び出しをされた。
その時に言われたことがまた無茶な話だった。
「チョコラ殿。またもや急だけど明日と明後日の2日間は仕事を休んでください。挙式と披露宴を行います」
「はい??」
「明日は挙式後、ここコミュレットでご両親や王家をはじめ公爵家など重鎮が招待された披露宴を行い、翌日は新館で一般の方に向けた披露宴を行います」
「…………」
「聞いていますか?」
「……どうして2日も?」
「国の重鎮と一般の方を同じ場所では出来ませんからね。2日に分けたのです」
「国の重鎮とか要る?」
「もちろん必要ですよ。なにせ王家のご友人ですからね。それに陛下がどうしても直接祝うと申されていますのでこちらは欠かせません。また英雄殿に感謝している国民は多いですからね。その方達からも祝える方法をとお願いをされています。ですからこのような方法を取らせていただきました」
「いや… だけどそこまでしなくても……」
「はい。チョコラ殿ならそう言われると思いましたから、チョコラ殿を外してマリーサ様と準備を進めさせて頂きました」
「……そうですか……」
「では、明日お迎えに参りますのでよろしくお願い致しますね」
「はい……」
マリーサさんがやってきて2週間。明日は挙式らしい。
俺が準備したのは会場のクリーニングってか? どんなギャグだよ。
皆様には感謝感謝です。
日ごろから本作をお読みいただきありがとうござます。
気が付いたらユニーク数が103000人と10万人を超えていました。
ここまでご支援を頂いた皆様。本当にありがとうございます。
また、この場を借りて誤字報告のお礼も併せてさせて頂きます。
そして、本日は皆様への感謝を込めまして二本目の投稿を18時に致します。
いよいよ挙式のお話になりますので、合わせて楽しんで頂けたらと存じます。
文末になりましたが、皆様のご健勝を願うと共に、私も精進しながらこれからも書いて参りますので、引き続きご支援を頂けますようお願いを申す上げます。
大波 れん




