第二百十話 国からご褒美が出ました
リョウタ君とお母さんのサナエさんがお互いの無事を確認しあい、落ち着いたところで食事のお誘いをした。こっそりうまいっ亭にお願いをしていたんだけどね。だって作ってる時間も無かったもん。それにここでどんな生活をしているか知ってもらうのにも良いかなって……。
サナエさんに改めてマルサールと露店から戻って来たキッカを紹介し、ここには居ないが医学学校に行っているアントンの事も伝えた。
「あの、どうしてお店とは関係のない医学学校に通わせているんですか?」
サナエさんの何気ない疑問だった。
「この子たちは俺が王都に来た時にお世話になった教会の孤児院に居た子達です。孤児院って事だけでどこかに雇ってもらうにも普通の子達より厳しくて、俺が出来る事は無いか考えたらこの子達が持っている能力を伸ばして、自分で稼げる力を身に付ける場所を提供してやることを思い付いたんです。そして初めて3人を受け入れ、たまたまアントンは医学学校を出してやる事が最善だっただけです」
「素晴らしいです。誰にもできるような事では無いですよ」
「いえ、出来る人がやれば良いだけの事で、俺にはそれを出来る環境にあっただけです」
「それでも……」
「それより、リョウタ君をどうするかですよ」
「私は…… チョコラ様が宜しければこのままリョウタを預かって貰いたいと思っています」
「リョウタ君は?」
「俺もこのままここで仕事したいです」
「村長もリョウタの好きにさせてやれば良いと言ってくれています」
「そうだね。いま村に帰っても何も出来ないようだしね、少なくとも再建するまでは預かりますよ。その後の事はその時に考えましょう」
「ありがとうございます」
「よろしくお願いをします」
そして暫くは王都に滞在したいと言うサナエさんに狭いけどリョウタ君の部屋で泊まってもらう事にした。
俺たちが王都に戻って5日程した時だ、また来たのかと言いたくなるほど見慣れた馬車が店の前に止まった。下りて来たのは宰相様だ。
「チョコラ殿はおいでかな?」
「宰相様。ようこそお越しくださいました」
「陛下がお呼びです。アスナル村の親子と共にご同行願いたい」
「わかりました」
リョウタ君とサナエさんを呼んで一緒に馬車に乗る。ルーバ達も当然のように付いてきた。
初めての宮殿におどおどしながら宰相さんの後を付いていくリョウタ君とサナエさん。通された謁見の間に入る頃には今にも倒れそうっていう感じだった。
「この度のアスナル村の現状を知らせてくれたリョウタなる者はそなたですか」
「……おっ…お…おれ…です」
「そうですか。そなたの活躍によりヘンダール領の不正を正すことが出来ました。礼を言います」
「俺は火事の中逃げて、迷って来ただけで何も……」
「経緯など関係ありません。そなた…… リョウタ君でしたね。リョウタ君がチョコラ殿に会って今回の件が解決したという事実が大事なのです。よく教えてくれました」
「……はい……」
「今回の功労者に褒美を授ける。アスナル村、リョウタ。その方に金貨200枚を与える」
「あ、あの……」
「なんだ」
「そのお金は村の為に使ってください。俺はチョコラさん…… 店長の店で働くことになったから要りません」
リョウタ君の発言に大笑いをしだす陛下にさらにリョウタ君が言った
「せっかくのお気持ちを断ってすいません。でも俺は仕事が見つかったけど村の人たちは住むところも無くなり畑も壊されお金が有りません。だから……そのお金は村の人にお願いします」
「わかりました。リョウタ君の気持ちを尊重しましょう。宰相」
「はい」
「復興費とは別に領主が掛けた迷惑料としてこのお金に上乗せしてアスナル村の者たち全員に見舞金として金貨10枚を配布しなさい」
「直ちに致します」
「ありがとうござます」
「気にしなくても構いません。私は感心をしているのです。さすが、我が王家の友人チョコラ殿が見込んだ子です」
「えっ、店長が王家の友人? すげぇ~」
「そうですよ。チョコラ殿には私もお世話になっています。安心して店の仕事に励むと良いでしょう」
「はい!」
おどおどしていたリョウタ君も最後の返事だけは元気いっぱいだった。




