第二百九話 親子の再会
アスナル村を占拠する領兵は拘束したのち領館に連れられ騎士団による尋問が行われ予定で、領主のヘンダール公は王宮で事情徴収がされると聞かされた。
政治的なことは判らないけど俺はリョウタ君のお母さんが無事でいてくれた事で満足していた。
騎士団が用意してくれたテントで一夜を明かした村の人たちは薬草畑が心配だからと様子を見に行ったりとしていて、村長さんもアルウェイさんと村の再建に向けて話しているようでこちらも忙しいようだった。
俺はリョウタ君のお母さん、名前はサナエさんと言う。サナエさんとは騎士団が到着したら王都に行きリョウタ君に会わせる約束をしていて、その後の事は会ってから決めてはと提案をしておいたけど、騎士団はしばらくこの地に駐留するらしく俺たちだけで先に戻ることにしたのだが、アルウェイさんと村長さんには一言断っておかないと心配をさせるだろうからと様子を伺っていたがなかなかタイミングを見つける事が出来なかった俺にルーバが業を煮やして二人に割って入って行った。
『アルウェイよ、チョコラが話をしたいそうだ。聞いてやれ』
「神獣殿、チョコラ殿は何処にいるのです?」
『あそこだ!』
ルーバに促されるようにアルウェイさんが俺を見るから傍まで行き話を切り出した
「アルウェイさん、俺たちはリョウタ君のお母さんを連れて先に王都に戻ろうかと思っているんですけど、その報告に……」
「そうですか、わかりました。神獣殿達が居るので心配は無いですが気を付けて」
「ありがとうございます。村長さんもサナエさんを連れて行きますが良いですか?」
「村の手伝いよりリョウタに会わせるのが先だ」
村長の言葉を聞いたサナエさん
「ありがとうございます。村の大事な時に抜けるなんて申し訳ありません」
「気にせんでよい。こうして村に戻れたのもリョウタが騎士団を呼んできてくれたからじゃ。その功労者が会いたがっているお前さんに会わせてやることが一番の褒美になるだろうからな」
「はい。出来るだけ早く戻ってきます」
「そんなことは気にせんでよい。チョコラ殿のお陰でリョウタも新たな道を踏み出したようだ、これからの事はよくリョウタと相談して決めるが良い。いかなる判断をしても村の者は応援をしいておる」
「はい。リョウタはともかくここは主人が守った地です。だから私はここに戻ってきます」
「そうか。でも急ぐことはないぞ」
「はい。ありがとうございます」
「チョコラ殿、ご迷惑をおかけしますが村の者をよろしくお頼みします」
あいさつも済んだことでサナエさんをルーバに乗せて村を後にした。
「サナエさんを乗せてるんだからな……」
『わかっておるわ!』
「「ぎゃ~~~~~~っ」」
俺とサナエさんの絶叫がこだました。
王都の門に着くころにはサナエさんは気絶しており俺もフラフラな状態だった。
このままでは王都に入れないから少し手前でサナエさんが気が付くまで休憩をとった。
小一時間してサナエが意識を取りもしたことで歩いて門まで行き街に入った。
ホンちゃんが先に店に飛び、リョウタ君とマルサールに俺たちが帰った来たことを伝えてくれた。
「お母さん…… おかあさ~~ん」
サナエさんと見つけたリョウタ君が走ってきて抱き着いた。
「リョウタ、心配かけてごめんね」
「良いんだ。おかあさんが生きてたから」
「リョウタこそ。今回は大活躍だったよ」
感動のシーンを邪魔するのもなんだけど場所が場所だから俺は店に入るように二人に言った。
「そうですすね」
「こっちだよ」
サナエさんの手を引き店まで案内をするリョウタ君は今までとは嘘のように生き生きとした笑顔を見せていた。




