第二百五話 いざ、捜索へ
リョウタ君より村の場所を詳しく聞く。そこはヘンダール領のアスナル村と言うらしい。
ヘンダール領は王都から南にあり、1年ほど前に領主が先代の次男に代替わりをしたという。
アスナル村はその中でも一番北に有り、隣領と境にある山間の村で林業と狩猟を生業にしていて、魔獣も出たことが無く、それなりに安定した生活が遅れていたらしい。それはリョウタ君の服を見れば理解はできた。
火事が起こったのは半月ほど前、それなりの時間が経っているのでどれだけの人が居るかは不明だが、陛下との話で聞いた領主が捜索した報告は10日ほど前に届けられ、生き残った者は見つからなかったと聞いた。あまりの短期間に報告書が上がって来たことに本当に捜索をしたのか疑問を持ちながら聞いていたが、再捜索をするにしても時間が経ちすぎ居ているから今更見つかるかは不安も有ったが、心のどこかで早く見つけてあげないといけないと急かされている感じもしていた。
今回の捜索は俺と神獣だけで行う事にした。リョウタ君も行くと言っていたが仕事を覚える事が先だと説得をして留守番をしてもらった。
俺は非常食や水、薬などかなりの量を空間収納に用意してルーバの背に乗るとアスナル村に向けて出発した。
ルーバに乗り走る事3時間。アスナル村があった場所付近に来ていた。本当ならこんな短時間で来れる場所ではないが、ルーバがどんな走りをしたかはもう分かってくれると思う。
「レーちゃんと親鳥さんはホンちゃんは森の中を探してくれる。近くには居ないと思うから少し離れたところ。洞窟とかは慎重に探してみてね。ルーバは俺と一緒にこの近くの捜索ね。何かあったらすぐに報告して」
『わかったなの~』
『任せろ』
『……』
「じゃ~ 散開」
レーちゃんたちを見送ると俺は村の方に近づいた。どうも何か変だ。山火事の延焼にしては山の燃え方が小さい。しかもすでに村が在っただろう場所に何かを作って居たからだ。村が火事で全滅してから二週間でもう何かを作っているって変じゃないか? しかもかなり外形が出来て居る。
言い方が悪いが予め準備をしていたかのように思えたのだ。
「ルーバ、こんなに短期間にあそこまで出来るものか?」
『人間界の事は判らんが、何か有りそうだな』
「そう思う?」
『ここは後からでも調べられる。落雷が落ちた場所を探すぞ』
再びルーバにまたがり村の周りを見ていくといきなりルーバが止まった。
「何か見つけたのか?」
『たぶんこの辺りだ』
俺はルーバから降りると鑑定を発動して辺りを見渡した。すると黒に近い紫色を纏っている焼け落ちた木を見つけた。しかもそれが何本かあり、村の方に向かって並んでいる。
「ルーバ…… あれ」
『見つけたか』
「なんか変な色が纏わりついている」
『それは魔法痕だ』
「魔法痕?」
『魔法痕とは術師のその時の感情が色となり残るのだ。良い感情は金とか銀。悪意が有るときは黒く残る。魔法痕の色を見れば好意か悪意かは一目瞭然だ』
「そうなんだ。この木は黒く見えるから悪意が有ったって事か……」
『そうだな。これを見て何か気が付かんか?』
ルーバに言われて注意深く検証をしてみて気が付いた。落雷で発生した火は村に誘導されていた。しかもその落雷自体が魔法でこの木に落とされたという事だ。
『やっとわかったか。これは天災でない。悪意ある者が仕組んだ火事だ』




