第二百三話 まさかの助言
リョウタ君が風呂に入っている間に今まで着ていた服と靴を再生スキルを使いながらクリーニングをする。ボロボロだったそれらは新品同様となり外に着て言っても恥ずかしく無いものになっていた。それよりも山にある村と聞いていたが素材を見ると王都では珍しい生地を使っているように見えた。これはリョウタ君が落ち着いたら聞いて見る事にしよう。
リョウタ君が風呂から出てきて再生された自分の服を見て驚いていたが俺のスキルの話をしてこの店を始めたことも話すとなんとかわかってくれた。
買い物に行く前にタージさんとミハルさんに紹介しておいた。基本的に食事をお願いするためもある。リョウタ君を雇った経緯を話すと「なんでも拾ってくるな」と笑われた。
「俺はチョコラの兄みたいな者だ。何かあったら遠慮なく俺に言えよ」
「そこは親代わりって言うんじゃないの?」
「そこまで老けてねぇよ」
「リョウタ君。これからよろしくね」
「……よろしくお願いします」
タージさんとミハルさんからも歓迎されリョウタ君も安心したようだ。
それから替えの服を買いに市場へと行き、ついでにキッカの店に寄った。
「店長いらっしゃい」
「いらっしゃい。ところでその子は誰?」
「二人に紹介しようと思って連れて来た。この子は今日から住み込みで雇ったリョウタ君だ。この二人はキッカとマルサール。リョウタ君の先輩にあたる。いろいろ教えてもらえ」
「リョウタと言います。よろしくお願いします」
「キッカよ。今はこの店の店主だけど、リョウ君と同じ店長の店の従業員よ」
「俺はマルサール。俺も同じだ。昼からここに手伝いに来ている」
「僕はリョウタ……です」
簡単な自己紹介をしていたけど俺はまだやりたいことが有ったのでリョウタ君を二人に預けることにした。
「マルサール。俺はこれから行くところがあるからここを閉めたらリョウタ君を店まで連れて帰って来てくれ」
「わかりました」
「リョウタ君。君の初仕事だよ。ここに居て二人の仕事を見学していて。それからマルサールと一緒に帰ってくるんだ」
「……はい」
「大丈夫だよ。ふたりとも優しいからね、何かあったら遠慮なく言うと良いよ」
「そうだぞ。おれはリョウタの先輩だからな。遠慮するなよ」
「私もよ」
「ありがとうございます」
リョウタ君を二人に預けたその足で俺は騎士団の詰め所にやってきた。
「すいません。騎士団長のゴーラルさんに会いたいのですがお出ででしょうか」
「あっ、これはチョコラ殿。お久しぶりです。団長は王宮に出向いていて留守にしていますが、副団長なら居りますが」
「うん。アルウェイさんでも良いよ。ちょっとお願いしたいことがあるんだ」
「わかりました。すぐにご案内いたします」
通された部屋で少し待っているとアルウェイさんがやって来た。
「チョコラ殿が納品以外にここに来るとは珍しいですね。団の者に聞いたのですが私に願い事があるとか」
「はい。最近の事ですが山火事の延焼で村が全滅したという話は聞いたことがありますか?」
「そうですね。確かに南部の村が火事で消滅したと報告は来ています」
「じつは……」
俺はリョウタ君から聞いた話を交え生き延びた人がもしかしたら森の中で居るかも知れないから捜索をして欲しいとお願いをした。
「わかりました。この件は私の一存では決められませんので団長と相談をしたのち、陛下の認可が下りてからになります」
「時間が掛かりそうですね……」
「これは決まり事ですからね、いくら副団長と言え勝手に動けないのですが…… 一つ良い方法は伝授できますよ」
「どんな方法ですか?」
「チョコラ殿が陛下に直接お願いをするんです。王家のご友人で英雄殿頼みです陛下も無下には出来ないでしょう」
「……」
いまアルウェイさんの口元がいやらしく釣り上がったような気がした。




