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第二百二話 新たな出会い

マルサールがキッカを手伝うようになりキッカの店の売り上げも上向きになってきたようだ。

ただ、その場で買取った物を持ち帰り、俺がクリーニングをしないと再販が出来ないことに気づいた時には時遅く、近くで見守るつもりが手伝う羽目になっていた。

しかし、そこは俺の店の出先となっているから全くの傍観者になれないのかも知れないと黙って協力をしているよ。そう思うとアントンが居ない不便さをしみじみと感じた。


俺の店はと言うと、午後から俺一人になることからレーちゃん親子に店番を頼み、お客が来たら呼んでもらう事にしたらレーちゃんが嬉しそうに引き受けてくれた。


驚いたのはリサイクル品を万引きしようとした少年が店を出た瞬間に捕まって居たことだ。親鳥さんに事情を聴くと盗もうとしていたから結界を張って逃げられないようにしたそうだ。


とにかく、話を聞こうと結界は解かないまま店の中に入れた。

えっ、どう入れたかった? 親鳥さんの結界を店の中に延ばし、外から追込むように狭めて行っただけだよ。まるで追込み漁のようだと思ったよ。


話しを戻してこの子を見るとまだ10代半ばと言ったところだろうか、少し痩せこけてボロボロの服を着ていたことから困窮が原因なんだろうと想像してみた。


「とりあえず、これ食べていよ」


俺は何も聞かずに作り置きしていた肉まんとピザ風まんにお茶を添えて出してやった。

その横で『レーちゃんも食べるなの~』と騒いでいるから親鳥さんと一緒に出してやった。更には匂いに釣られて戻って来たルーバとホンちゃん…… はぁ~


『こいつは誰だ?』

『あのね、お店のを盗んだ子なの~』

『おっ! じゃ~ 悪い奴だな』

『よし、お仕置きをしておくか』


これだから……「今から話を聞くんだから手を出さないでよね」と念を押しておいた。


「ねぇ、君の名前は」

「……」

「教えてくれないかな」

「……」

「何も言ってくれないと近衛隊に引き渡さないといけなくなるんだどな……」

「……リョウタ」

「リョウタ君ね。どこに住んでるの?」

「……家は無い」

「そっか。じゃ今まで何処に居たの?」

「3日前にこの街に来た……」


続きはこうだ。リョウタ君は14歳で、今まで両親と共に住んでいたが、近くで起きた落雷による山火事で村に飛び火。消火が追い付かず村が全焼してしまったらしい。父親は消火活動のさなかに亡くなり、母親は一緒に村から出る途中、人並みに押されてはぐれてしまい、探したけど見つける事が出来ずに一人になってしまった。放心状態で適当に歩いてきたら何処に居るのかわからなくなり今まで川の水を飲んだり、魚や雑草を食べてきたがこの街に着いてからお金が無いから何も食べれず限界に近かった。そしてこの前を通ったら店に誰も居なくて「あそこに在るのを盗んで売ったらどうだ。金になるぞ」って声が聞こえてきたと思ったらコレを手にしていたと話してくれた。


「そうか。大変だったね。もう話はいいからコレ食べなよ」

「……ありがとうござい…ます」


リョウタ君は涙を流しながら肉まんを食べている。この涙が何を意味しているのかは分からないが俺はこの子の力になりたいと思ってしまった。


俺は肉まんを食べ終え、ピザ風まんに手を伸ばしているリョウタ君にこの店で働かないか提案をしてみた。もちろん住み込みで。もし断られたら1年は孤児院に預かってもらえば良いだけだ。


リョウタ君の答えは「お願いします」


提案した時はかなり驚いた表情をしていたし、本当に良いのかと何度も確認をされたけどここを出ても行くところが無いことや頼れる人も居ないからと自分を納得させたようで出した答えがお願いしますだった。


「じゃ~ それ食べたら風呂に入り買い物に出かけるぞ」


出会いは好く無かったが、話しをするととても素直な子で何とかしてやりたい。力になってやりたいと思った。もしかしてこう言う事がロメーロ様の言っていた『救いを求めて来た者』って事だろうか…… 


難しいことは解らないけど、とにかく良い子と巡り会えたなと俺は思っていた。


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