第二話 バイトは皿洗い
今日からまた職探しだ。普段からあまり物を買っていないから少しばかりは余裕があるが、それに頼っていてはそれも直ぐに無くなってしまう。とにかく早く見つけないと……
適当に街を歩いていると小さな食堂が【短期のお手伝いさん募集】と張り紙をしてあるのを見つけた。
短期がどれくらいの期間か分からないけど、ここで仕事をさせて貰いながら次の仕事を探す事にしようと店の中に入って行った。
「すいません。表の求人を見たのですが、誰かいませんか」と声をかえると、奥から厳つい感じの男が出て来て、「なんじゃ、男じゃねぇ~か。張り紙に女って書いてなかったか??」と威圧されそうなところをグッと抑えて「……書いてなかったです」と答えるのがやっとだった。
そうかそうかと笑い出し自己紹介を始めた男は、この店「うまいっ亭」の店主でタージさん。なんでもタージさんの顔を見ると逃げ出してしまうらしい。だから普段はタージさんは厨房でお店は奥さんのミハルさんとミハルさんの妹のミリアさんが担当しているらしい。
今回の求人は、ミリアさんが出産のためしばらく休むことになり復帰するまでの約3か月位を手伝って欲しいと言う事だった。
「よし、俺を見て逃げ出さず返事も返してきたからな。採用だ」
「えっ? 男だけど良いんですか?」
「おぉ~構わんぞ。今日から働けるなら。だけどな」
「今日からなんて願っても無い事です」
仕事内容は皿洗いと簡単な盛り付け。初日から接客は無理だろうということで配慮してくれた。
時間は朝10時~閉店の夜9時まで。報酬は1日銀貨1枚。休みは5日仕事して1日の休み。
ちなみに、この国は24時間制でひと月30日の12か月。通貨は銅貨・大銅貨・銀貨・大銀貨・金貨の5種で、銅貨100枚で大銅貨1枚に。大銅貨100枚で銀貨1枚になる。また、平均月収は大人で銀貨30枚~40枚くらい。だからそんなに悪くない。
お店の開店は11時から。もうすぐ開店時間って事も有り、奥さんのミハルさんがやって来た。
「遅くなっちゃってごめんねぇ~。 って、この人は?」
「おぉ~ 今日から働いてくれる…… 名は何だったっけ?」
「チョコラです。すいません。まだ名前を言ってませんでした」
「チョコラか。よろしく頼む」
「私はミハル。よろしくお願いしますね」
こうして俺の新しい職場。期間限定だけど決まった。
開店から人足が多く、すぐに満席になったが洗う皿はまだ無いので、慣れない手つきでサラダを盛り付けたり、パンを軽く焼いたりとタージさんの助手的な事がこの店での仕事始めになった。