第百九十九話 ロメーロ様の神託
昨日、レーちゃんと親鳥さんは神界から帰ってこなかった。もともとが神界の住人なので心配はしていないが俺の癒しであるレーちゃんが戻らなかったのは寂しかった。
そして今、ルーバに連れられ侯爵領のあるご神木までやって来ていた。もちろん監視員さんの許可は得てある。と言ってもフリーパスで通してくれんだけどね。そうそう、ついでと言っては何だけど、ホンちゃんをロメーロ様に紹介しようと思いホンちゃんも連れてきたよ。
ご神木前に来るといつものように祈りを捧げる。
まずは大地に両手をついて深く2度頭を下げる。そして2度柏手を打つ。そしてもう一度深く頭を下げる。それから両手を合わせ神に捧げる言葉を紡ぐ。
「この木に宿る御神様の益々のご開運をお祈り申します。この木に宿る御神様の益々のご開運をお祈り申します。この木に宿る御神様の益々のご開運をお祈り申します」
ここでもう一度深く長く頭を下げ、感謝の気持ちを込めながら次なる言葉を言う。
「本日は御神様の御前にご挨拶をさせて頂けました事を感謝いたします」
『久しいですねチョコラ殿』
「ご無沙汰をしており申し訳ございません。ロメーロ様」
『よいよい。そなたの事は我が従属である不死鳥よりきいておる』
えっ、親鳥さんからどんな報告を聞いてるんだろう?
『此度、我が元に来てもらったのは其方が新たなスキルを授かった事に関してです』
「新しいスキルと言うと導きの事ですか?」
『その通りです』
思わぬところで新たなスキルについて話が聞けそうで助かるが、ロメーロ様まで出てくるとは一体どんなスキルなのか不安でもあった。
『初めに、導きについてお話ししましょう。導きとは迷える者を本来あるべき場所に案内することです。しかし、人は己で考え、判断をし、自ら望む場所に到達できるものは残念ながら僅かしかいません。多くの者が挫折したり目的を見失ったりしています。そこで求められるのがそういう者たちを導いてやる者です。今回、其方の助力で3人が己の持つ能力を活かし成長を促す活動を何の代償も無く導かれました。この経緯・記録は我が不死鳥を通じて創造神様の元に届けられ創造神様自ら其方に此度のスキル導きを授えられました。これで其方が遂行しようとしている後人の育成に役たつことでしょう』
「俺はそんな大層な事を考えてるのでなく、ただ社会に相手にされない孤児院の子達に自立が出来る方法を模索しているだけで迷える者とか導くとかは……」
『深く考えることはありません。其方に救いを求め来たものに導きの助けをしてくれるだけで良いのです。』
「でも俺は単なるクリーニング屋ですから……」
『確かに、今はそうです。しかし、其方の本来スキルは再生と創造です。職業として再生を意識して使っているのが現状で、無意識に使ってきたのが創造です。此度の導きは創造のスキルを活用することで多くの者がその恩恵に与るでしょう』
「俺に出来るでしょうか?」
『心配は要りません。すでに其方には有能な協力者が何人も居るのです。積極的にその者たちの力を借りなさい』
それだけ言うとロメーロ様は神界に戻られた。正直、これだけでは今一つ理解しがたかったが孤児院の子達への自立支援を肯定されたことは間違いない事だけはわかった。
『チョコラよ。難しく考えるな。今のままで思うように進めば良いのだ。お主の持つスキルが助けてくれる。心配は要らんと言うことだ』
「そうなの?」
『お主の傍には我もおる、レー親子もホンもおる。タージも居ればミハルもおる。何も変わらん』
「そうだね。これからも俺を助けてくれよ」
『ふん。当たり前のことを言うでないわ』
ルーバが照れている。
そう言えばホンちゃんの紹介を忘れていたのに後から気が付いたが、ルーバが言うにはすでに我から紹介をしておいたそうで俺の知らないうちにロメーロ様の加護を受けられていたとか……
『主、黙っていて悪かったな』




