第百九十五話 そうだマルサールの特訓に使おう
陛下におやつを要求された事から氷結保存をしておいた肉まんとピザ風まんをジュレスさんにも出してあげた。
「これは初めて見るものですね。新作ですか?」
「そんな大げさなものでは無いですけどね……」
「しかし、チョコラ殿の作るものはいつも美味いです」
陛下が食べながら褒めてくれるのは悪い気はしないけど、早く帰って欲しいかな……
「確かにこれは美味しいですね。温かいフワフワの皮の中にボリューム感あふれる肉が良いですね」
「ありがとうございます」
「しかし、英雄殿は多才な方ですね」
「そんなことは…… 」
「そうですよ。とある筋ではレシピ研究家とも呼ばれていますからね」
「レシピ研究家ですか」
なんでそんな事まで知ってんだ……
「巷で大流行のシュークリームもチョコラ殿が発案されたお菓子なんですよ」
「そうなんですか! ありがとうございます。良くぞシュークリームを世に出してくれました。私の大好物です。まさかその生みの親に会えるとはこれは感激です」
……なんか話が変な方向に行きそうだな。ここはさっき思い付いたことをちゃんと聞いておかないと聞けなくなる気がしてきた。
「あの、それより先ほどのお話ですが、こちらかも一つお願いがあるのですが聞いてもらえませんか」
「もちろんです。何なりとおっしゃってください」
「実は、もう一人この店にはマルサールと言う者が従業員で居ます。初めに対応をさせて頂いた者ですが、その者をメインにして俺がサポートするという形で今回の件をやらせて欲しいのです」
「そのマルサールという子はどんなスキルを持っているのですか?」
「はじめは真贋を持っていて、今は鑑定の中の下と言ったレベルのところまで進化しています」
「その子に任せても大丈夫なのですか?」
「大丈夫です。俺もサポートに付きますし……」
「その子に任せたいと考えたチョコラ殿の真意を聞かせてもらえませんか?」
陛下に真意は何かと問われ、俺の考えを話すことにした。
今までは店で古物の買取査定をしながらスキルアップに努めてきたが、この方法にも限界があり、現在は伸び悩み期に入っていて、今回の依頼をマルサールのレベルアップに繋げれるのではないかと閃いた。学生のスキルアップが学校の目的なら、うちの従業員であるマルサールのスキルアップの場として俺は便乗したいと思った。上手く行けば来年からはマルサールにスキル鑑定を任せることも出来るようになれば学校にも俺にもメリットがあり、大きな目で見ると優秀な鑑定スキルを持つ者が国内に生まれ、国にもメリットがあるのだ。ここにいるみんなにメリットがあれば陛下もダメとは言うまい。
「ジュレス。了承してあげなさい。レベルの高い鑑定士を育てるいい機会です。国としても歓迎できる提案です」
「御意にございます」
「陛下。ありがとうございます」
「気にしなくても良いですよ。チョコラ殿の提案はいつも国の役に立つことばかりです。私も王家の友人としてチョコラ殿を先王に薦めた甲斐が在ったというものです」
……あぁ~ほんと、あの時は余計なことをしてくれたよ。思い出せば今でも腹立たしい。
でも、そのお陰で融通が利くことも有ったから許してやるか……
「では、マルサールが主体で行うということでよろしくお願いします」
こうしてレベルアップに向けた特訓を目論むのだった。




