第十九話 犬に居つかれました
『吾輩を救ってくれたのはお主か?』
何処から聞こえるんだろう??
『吾輩を救ってくれたのはお主か? と聞いておる』
??? 外から聞こえてくるのかな???
『お主、聞こえておらんのか?』
聞こえてるけど……って、もしかして……この犬?
『吾輩は犬ではない。シルバーウルフだ』
やっぱりこの犬がしゃべってる?
『シルバーウルフと言うただろ』
そうか。この犬、喋れたんだね。スゴイな。
『……もう犬でも何でもよいわ。とにかく感謝するぞ。礼を言う』
「あの…… どうして怪我してたの?」
『信じられんかも知れんが、吾輩は神界でとある神様の護衛をしておった。しかし、急な襲撃に遭い神様を守るための盾となり、怪我を負った。しかも、その時に出来た空間の亀裂に落ちてと思ったらここにいた』
「じゃ~犬さんは神界の住人なの?」
『そうじゃ。だが、いったん神界を出ると迎えが来るか、この地で功績を残し、神界への道を開くまでは戻れんのだ』
「それは大変だね。いつ迎えに来て貰えるの?」
『それは期待できんな。護衛の替えは居るが、我を捜索するゆとりが今の神界には無いからな』
「そうなんだ……。 じゃ~これからどうするつもりな?」
『ここを吾輩の住処にするつもりだ。よろしく頼む』
「え~~。こんな狭い部屋に一緒に住むの?」
『吾輩を救ったのも何かの縁だ。責任を取って吾輩をココに住まわせろ』
「いや……何の責任かな??」
『あっ、言い方を間違えた。責任ではなく、吾輩に同情して? いや違う。それだと吾輩が惨めな気持ちになる…… おい。何か良い表現はないか・・・?』
「……俺に聞かれても……」
『とにかく、宜しくだ』
そんなこんなのやり取りで犬が居候を決めたようだ。
「ところで、ご飯は何を食べるの?」
『神界の者は食事はとらんが…… 本能的に肉だな』
「えぇ~っと…… この国で動物を飼う時は役場に届を出さないといけないんだけど、一緒に行ってくれる?」
『それをせねばここには居られんのか?』
「そうだね」
『仕方がない、では参ろう』
役場の住民管理課で本来ならペット登録をするはずなのだけど……
「今シルバーウルフと言いました?」
「はい。本人がそう言ってるんで…… そうなんだと思います」
「……シルバーウルフは魔獣に分類されてますので、登録は冒険者ギルドでのお願いします」
「えっ? ここでは出来ないのですか?」
「はい。普通の犬なら出来るのですが……魔獣はちょっと……」
そんなわけで今度は冒険者ギルドにやって来たのだった。