第百八十七話 それぞれの思い
翌日からキッカは出店場所の選定に奔走していた。何度もジュグレさんからダメ出しをされていたからだ。ジュグレさんから聞いたところではキッカの中に確信的な思いが見えてこないのだとか。俺にはよく分からないけど、そこにどのような商機が有るのかが見えず、そこでどう展開をしていくのかが定まって居ないようで自分で気が付くまでたとえどんなにいい場所でもダメ出しを続けるらしく、心が折れないようにさりげないサポートを頼まれてしまった。
他にも古物商の認可を受けるのにも苦戦をしているようで、当面は俺の店の出店ということにすれば構わないらしく、おいおい認可を取得すれば良いということも分かったのでこちらは慌てる事がなくなった。
こんな状況でもキッカは心が折れることなく頑張っている。どうやら俺に習い教会の子たちの受け皿を作り俺への恩を返すのだと俺が3人を迎えた初日に話したことを実践しようとしてくれている。そんな事を聞かされるとどうしても余計な手伝いをしたくなってしまうのだがジュグレさんに我慢しなさいと何度もたしなめられていた。
ひとり店に出ているマルサールはキッカが屋台で扱いやすいような物を中心に買取りを進めていた。真贋から鑑定へとすでにスキルアップしてたことで商品の特徴も分かるようになったことを活かして一つ一つに鑑定内容を張り付け、キッカが商品の説明を求められてもちゃんと対応が出来るようにと気配りもされていた。「俺にはこれくらいしかできないからな」と照れていたのはご愛敬だ。
実はマルサールはキッカに恋心を抱いているのは俺だけが知る秘密だ。
えっ、なんで知っているかって?
それはマルサールをスキルアップの確認で鑑定をした時に出てきたからさ。
だけど、まだ本人の自覚なしと補足まで付いていたから余計なことはしないのが一番だと思いそっと見守っている。
でも、この二人がうまく行ってくれたら本当に古物部門を切り離し二人に任せられるのに……と二人が上手くいくことを願っているんだ。
そのためにも鑑定に磨きをかけてもらうからな。覚悟しておけよマルサール君。
それから数日…… キッカからやっと場所が決まったと報告を受けた。
詳しく話を聞くと、場所は市民中央広場の南通り近く。屋台も無理な出費を抑えられるからと日よけテントで路地置きの露店にしたらしい。
場所の使用許可も無事に下りたことで準備が整い、3日後から店を出す事になった。それまでは広場でチラシ配りなど宣伝に力を入れるとかでそこまで言うと俺に話は終わったとばかりにマルサールとどれを売るのか商品選びを始めてしまった。
俺は空気を読めないけど、ここは邪魔をしてはいけないと裏庭の作業場に行き自分の仕事を始めた。
お二人さん…… いや、マルサール。頑張れよ!




